「先入観を捨てろ」が正解?もう騙されたくない小倉のトラップ

「天災は忘れた頃にやってくる」

 これは、自然災害はその被害を忘れたときに再び起こるものという警鐘だが、今週末から再開する小倉開催にも当てはまりそうだ。期間としてはわずか2週間に過ぎないため、まだまだ忘れるには早いという声もあるだろう。

 だが、週末の開催が終わった途端に翌週のことばかりを考えてしまうのも、競馬ファンのいいところでもあり悪いところ。過去の傾向を思い出しておきたい。

 前回の小倉開催終了時にも記事にしたのだが、今年の小倉はとにかく前残りの傾向が顕著だった。開幕週にスピード決着で逃げ先行馬が有利なことは例年通りでも、通常なら開催が進むのに比例して馬場が傷み、徐々に差し追い込みも利くように変化していく。

 ところが、今年の場合はこれが逆だったのだから異常事態だ。週を追うごとに前残りがより顕著となり、後ろから競馬をする人気馬が届かないケースが目立った。良好なコンディションの維持には、馬場造園課の尽力が欠かせないものの、逃げ馬の勝率が最も高かったのが最終週という現実には、違和感しか残らなかった。

 見た目としては馬場の内側に荒れた箇所もあったとして、前回の最終週から2週間の中休みもあったのだから、今週末からいきなり差し追い込み馬向きの馬場になっていると想像するのは、いくらなんでも都合が良過ぎるだろう。

騙されたくない小倉のトラップ

 今週末には芝2000mの重賞・小倉記念(G3)の開催を控えているが、上位人気馬に注目が集まるようなら、人気薄の逃げ先行勢こそ怖い存在である。

 そこで、少し前の中京記念(G3)の結果を思い出して欲しい。

 このレースは、外枠からハナを主張したベレヌスが先手を取る展開。戦前に逃げると見られていたベステンダンクが控えたこともあって、1000mの通過は59秒9のスローに落ち着いた。

 ただでさえ、CBC賞(G3)で1分5秒8(良)のスーパーレコードが出ていた小倉。スローに落としたベレヌスがまんまと逃げ切りを決め、初重賞勝ちを飾ってしまった。レースを観ている側からすれば、2番手3番手の騎手がどうして追いかけなかったのかは、腑に落ちないところでもあるが、後方から追い上げたカテドラルが2着に入ったことを考えると、一度隊列の決まったレースで下手に動けない心理もあったのかもしれない

「小倉記念でも逃げ馬には要注意ですよ。レースは、先頭でゴールした馬が勝つ訳ですから、前につけている馬の方が、当然ながら勝率が高いです。G1などの大きなレースでも、アッと驚くような波乱の立役者になるのは、追い込み馬よりも逃げ馬の方が多いですよね。

ただ、問題はベステンダンクのように逃げると思われていながら、逃げられないパターンでしょうか。こういうときは、出たなりで位置取りを考えるタイプの騎手より、強気に乗れるタイプに魅力を感じます」(競馬記者)

 ちなみに小倉記念の登録馬を見渡してみると、前走で逃げた馬は1頭もいない。

 となると2番手3番手で好走していた馬が、ハナを主張する可能性が高そう。最終的な結論は、枠順が確定してから出した方が無難ではあるものの、後ろからの競馬が濃厚なジェラルディーナなどは、危険な人気馬になりそうだ。

 個人的なおすすめでは、ただ1頭の3歳馬ピースオブエイト(牡3、栗東・奥村豊厩舎)だ。

 3連勝で挑んだ日本ダービー(G1)は、12番人気で18着と振るわなかったが、毎日杯(G3)を制した実力を考えると巻き返しの余地は十分。当初は、レパードS(G3)で来日初重賞勝ちを決めたC.ホー騎手の騎乗を予定していたようだが、ホー騎手が53キロで乗れないこともあって、若手の松本大輝騎手に重賞初騎乗のチャンスが回って来た。

 すんなりと先手を取れるようなら一発に期待できるのではないか。

黒井零

1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。

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