サクラバクシンオーの血が騒ぐ!? キーンランドC(G3)は「もう1頭の3歳馬」に注目、藤沢和雄調教師の英断からG1馬になったアノ馬の記憶
28日、札幌競馬場ではスプリント重賞のキーンランドC(G3)が開催される。過去には、2011年の覇者カレンチャンが続くスプリンターズS(G1)でG1初制覇を成し遂げたように、本番へ向け重要なステップレースだ。
今年も昨年の覇者レイハリアやアイビスサマーダッシュ(G3)で重賞初制覇を飾ったビリーバー、葵S(G3)を制した3歳馬ウインマーベルなどを筆頭に多士済々なメンバーが集結。
そんな中で注目したいのが、もう1頭の3歳馬トウシンマカオ(牡3、美浦・高柳瑞樹厩舎)だ。
一部のファンから距離の壁を感じさせるような声も…
同馬はこれまで全て距離1400m~1600mを使われている通り、今回が初めてのスプリント戦となる。父ビッグアーサーが生粋のスプリンターであり、祖父は伝説級のスピードスター・サクラバクシンオー。初挑戦でも、ファンの期待はむしろ大きいかもしれない。
実際、新馬戦はマイルで勝利しているものの、6着に敗れた朝日杯フューチュリティS(G1)や8着に終わった前走のNHKマイルC(G1)後には、ネットの掲示板やSNS等でも「距離が長い」「1400まで」など一部のファンから距離の壁を感じさせるような声があがっていた。
先日には陣営も『デイリースポーツ』の取材に対し「(NHK)マイルCで乗り役さんと少し距離が長いという話になりました」と明かしており、今回初のスプリント戦が吉と出る可能性は十分にあるだろう。
過去にも、距離をマイルからスプリントへ切り替えて成功した例は数多くある。例えば、2019年にスプリンターズSを制したタワーオブロンドンもその1頭といえよう。
同馬は札幌芝1500mでデビュー勝ちし、朝日杯フューチュリティSで3着、アーリントンC(G3)を制するなどマイル重賞で度々結果を出していた。ところが目標だったNHKマイルCで12着と大敗すると、その後はキャピタルS(OP)2着、東京新聞杯(G3)5着と引き続きマイル戦線を歩むも足踏みが続いていた。
そんな中で1400mの京王杯スプリングC(G2)を勝利。距離を短縮して結果が出たことで、陣営は当初登録していた安田記念(G1)を回避して函館スプリントS(G3)への出走に踏み切った。
同馬を管理していた藤沢和雄元調教師は「以前から1200mは使ってみたかった。結果次第でその後の路線は考えます」(『サンケイスポーツ』より引用)とコメント。初のスプリント戦は、今後の方向性の鍵を握る重要な一戦となった。
結果的に、この「路線変更」は成功。函館スプリントSで3着すると、続くキーンランドCでも2着に入った。さらにその後のセントウルS(G2)をレコード勝ちし、迎えたスプリンターズSでは、のちにG1馬となるモズスーパーフレア(2着)やダノンスマッシュ(3着)らを抑えてG1初制覇を果たす。陣営のスプリントへの路線変更が見事にハマり、ついにG1勝利を掴み取るまでに至った。
トウシンマカオもタワーオブロンドンと着順こそ違えど、1400mの京王杯2歳S(G2)で好走し、マイルG1の朝日杯フューチュリティSとNHKマイルCで敗れている点は同じ。スプリントへの距離短縮は、新たなる素質開花に繋がるかもしれない。
また、今回は新たな鞍上として川田将雅騎手を迎え入れることも心強い。
先週には早くも年間100勝を達成し、全国リーディングでトップを独走する川田騎手。6月のマーメイドS(G3)を3着して以降、先週まで重賞に騎乗した際は「1-3-3-0/7」と全て3着内に好走している。管理する高柳瑞厩舎とのコンビと言えばスターズオンアースで桜花賞(G1)を制しているように、陣営にとって頼もしい存在であるに違いない。
トウシンマカオにとって初のスプリント戦は、果たして吉と出るのか凶と出るのか。今後に向けても注目したい一戦だ。