再燃する「今村聖奈」待望論!? スプリンターズS(G1)テイエムスパーダ出遅れ「暴走」で15着大敗の主戦騎手に厳しい声
2日、中山競馬場で行われた秋の短距離王決定戦スプリンターズS(G1)は、8番人気のジャンダルム(牡7歳、栗東・池江泰寿厩舎)が勝利。人馬ともにこれが嬉しいG1初制覇となった。
「ジャンダルム、関係者の皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです」
レース後、そう初G1制覇の喜びをかみしめた荻野極騎手はデビュー7年目。最初の1、2年こそ20勝→47勝と勢いに乗ったが、その後は騎乗数が徐々に減少するなど、思うように勝ち星を延ばせず。昨年の年間265騎乗はキャリア最低となっていた。
「いい枠を引けました」
そんな苦労人だからこそ、運が味方したのかもしれない。舞台となった中山の芝コースは、前残りの目立つイン有利の状況。荻野騎手も「頭にありました」と当然把握しており、1枠2番という絶好枠を活かせたことが大きな勝因の1つとなったようだ。
その一方で、絶好枠を活かしきれなかったのが1枠1番のテイエムスパーダ(牝3歳、栗東・五十嵐忠男厩舎)だ。
「スタートが重要です」
レース前、1枠1番に決まったテイエムスパーダの主戦・国分恭介騎手は、そう気を引き締めた。今夏のCBC賞(G3)をJRAレコードで逃げ切った快速馬だけに「前に行くのがベター。イメージとしてはハナかなと」とG1初制覇へ、プランは頭に描けていた。
テイエムスパーダ出遅れ「大暴走」
しかし、肝心のレースではまさかの出遅れ……。国分恭騎手が手綱を激しく動かして、なんとかハナを確保できたものの前半の無理が祟ったのか、最後の直線では早々に失速。枠順の魅力もあって4番人気に推されていたが、16頭中15着の大敗を喫している。
「発馬自体は悪くなかったのですが、そこからスピードに乗るまでに時間が掛かってしまいましたね。すぐ隣にいたジャンダルムが好スタートを決めたことも、国分恭騎手には大きなプレッシャーになったと思います。なんとか強引にハナを切ることはできましたが、さすがにあのペースでは最後まで持たないと思います」(競馬記者)
記者が話す通り、テイエムスパーダが刻んだ11.9 – 10.1 – 10.7(=32.7秒)という前半3ハロンのラップは、一昨年にモズスーパーフレアが同レースで記録した11.9 – 10.1 – 10.8(=32.8秒)とほぼ同じだ。
結果的にモズスーパーフレアは10着に大敗。その年の高松宮記念(G1)を逃げ切った春のスプリント王でさえ失速したのだから、重賞1勝馬のテイエムスパーダには荷が重いペースだったと言わざるを得ないだろう。
離れた3番手を追走していたジャンダルムが押し切っただけに、国分恭騎手がもう少し冷静に騎乗できていればと結果は変わったかもしれないが、別の記者はスタートの出遅れ以外にも「重圧があったのではないか」という。
「この夏、テイエムスパーダはCBC賞を勝って重賞初制覇を飾りましたが、その時の鞍上は国分恭騎手ではなく、今村聖奈騎手でした。ハンデ戦の3歳牝馬で48キロという非常に軽いハンデになった影響もあって、まだデビューしたての新人にチャンスが巡ってきたというわけです。
そこで今村騎手は思い切った逃げを打って、3馬身半差の圧勝。藤田菜七子騎手に続く女性騎手2人目のJRA重賞制覇というだけでなく、ルーキーの初重賞初制覇、さらにはレコードで圧勝と、今村騎手はこのレースを機に一気にブレイクを果たしています。
ただ、この時の騎乗はあくまで代打。その後は主戦の国分恭騎手に戻ってきたわけですが、鮮烈なイメージがあるだけに今村騎手の待望論は今でも囁かれており、国分恭騎手の耳にも届いていると思います。
今回の敗戦は出遅れた上にオーバーペースで失速という、騎手として悔しい一戦でしたが、これでさらに“今村待望論”は熱を帯びるでしょうね」(別の記者)
記者が話すように、レース後にはネット上の競馬ファンからもSNSや掲示板などで「もう一度今村聖奈騎手に乗ってもらいたい」「今村騎手だったら……」「今村聖奈に戻してほしい」といった声が続々……。
すでに通算39勝と、G1騎乗の条件を満たしている今村騎手がここ最近「いつG1に乗るのか」と注目を集めている背景もあって“待望論”がより高まっているようだ。
「ただ、あの時(CBC賞)は48キロと非常に恵まれたハンデでしたし、陣営も『自分の仕事はしっかりしてくれる』と国分恭騎手を信頼しています。今村騎手が騎乗すれば注目が集まることは間違いですが、テイエムスパーダを一番手の内に入れているのは国分恭騎手。難しいかもしれませんが、なんとかこのまま頑張ってほしいですね」(同)
「ゲートは普通に出ましたが、ダッシュが利きませんでした。そこで脚を使ってしまいました」
レース後、そう敗因を語った国分恭騎手。そこにはスーパールーキー待望論のプレッシャーもあったのかもしれない。