「世紀の凡戦」に王者の復帰を望む声、大スランプ福永祐一に欠かせない救世主の今
2日、中山競馬場で行われたスプリンターズS(G1)は8番人気のジャンダルムが優勝。同馬は母ビリーヴに続いてスプリンターズSを勝利し、見事母仔制覇という偉業を成し遂げた。鞍上の荻野極騎手もこれが念願のG1初勝利となり、G1シーズンの幕開けを彩った二つのドラマは多くの人から祝福されることだろう。
キャリア29戦目でついに頂を掴んだジャンダルムに敬意を表したい一方で、レースレベルに疑問が残る一戦だったことは否めない。スプリンターズSの勝ち時計は1.07.8。昨年より0.7秒遅いだけでなく、前日に行われた勝浦特別(2勝クラス)にも0.1秒遅れを取った。
元JRA騎手の安藤勝己氏も自身のTwitterで「(ジャンダルムは)最高の位置が取れて展開とフィットした。上手く乗った馬が勝てる時計やったからね」と振り返ったように、展開一つで勝ち馬が変わる混戦だったことを示唆している。
その一方で、この混戦の一因となったのは、昨年の覇者であるピクシーナイト(牡4歳、栗東・音無秀孝厩舎)の不在もあるのではないか。同馬の主戦を任されている福永祐一騎手は、タイセイビジョンとコンビを組んで見せ場なく13着に敗れた。
ピクシーナイトが健在なら、春秋のスプリントG1でここまでの波乱は起きなかったかもしれない。
「世紀の凡戦」に王者の復帰を望む声
同馬は14年ぶりにスプリンターズSを3歳で優勝。4角2番手から直線半ばで先頭に立ち、ダノンスマッシュやレシステンシア、モズスーパーフレアといった歴戦のG1馬をねじ伏せた走りには、新たな時代の訪れを感じたファンも多かっただろう。
ピクシーナイトは勢いそのままにスプリント界の2カ国統一王者を目指して香港スプリント(香港・G1)に挑戦したが、結果的にこれが大誤算。国内販売のオッズで単勝1番人気に推された中でのレースは、多重落馬に巻き込まれるというまさかの展開で競走中止となった。
「ピクシーナイトの落馬は前方馬群での転倒に巻き込まれる形で発生した完全な不慮の事故です。派手な転び方だったので最悪の結果もよぎりましたが、競走能力喪失はなんとか免れ、現在も復帰を目指してトレーニングを行っています。
所属するシルクホースクラブによると、9月半ばの時点で人が騎乗してのキャンターまでは進んでいるようです。年内の復帰は断念するという報道も出ており、来春の高松宮記念に間に合うかが一つのポイントでしょうね。」(競馬記者)
まだ若いだけに、無事なら長らくスプリント戦線の主役を張れたであろうピクシーナイト。その復帰を待ち望むのは我々ファンだけではない。
「ピクシーナイトの主戦・福永祐一騎手も、香港での落馬の際は離脱を余儀なくされました。今年の2月に復帰して以降は、フェブラリーS(G1)と皐月賞(G1)を制し好調なリスタートを切りましたが、現在は重賞22連敗中とスランプ真っ只中です。
今年のスプリントG1はグレナディアガーズ、タイセイビジョンという初騎乗の馬を確保して臨みましたが、ともに二桁着順に敗れています。ピクシーナイトを一番待ち望んでいるのは福永騎手かもしれませんね」(同)
新しい王者がその座を守るか。それとも旧王者が怪我を克服して返り咲くか。多くの人が待つピクシーナイトだけに、焦らず着実に復帰への道を進んでほしい。