毎日王冠(G2)ダノンザキッド「自己ベスト更新」の悲しい事情
「良い状態で行けそうです」
2歳王者の復活へ――。9日の毎日王冠(G2)へ向けたダノンザキッド(牡4歳、栗東・安田隆行厩舎)の最終追い切りを見守った安田隆調教師が手応えを口にしている。
栗東の坂路で行われた追い切りは4ハロン55.8秒、ラスト12.5秒と目立ったタイムではなかったが、1週前は50.4秒で自己ベストを更新。それだけに軽めの最終追い切りは予定通りだった。「55秒台を予定していたので、ちょうどいい」と師も好感触だ。
一昨年にデビュー戦、東京スポーツ杯2歳S(G3、当時)、ホープフルS(G1)と3連勝したダノンザキッド。翌年のクラシックの中心に期待されていたが、その後は勝利から遠ざかって2年近くが経とうとしている。
それだけに、今秋は復権を懸けたシーズンになる。G1馬の秋初戦にもかかわらず、いきなり自己ベストを叩き出してくる辺り、陣営の「一戦必勝」という気迫が伝わってくる。
毎日王冠は戸崎圭太騎手との新コンビで挑むことに…
だが、どうやら「それだけ」の事情ではないようだ。
「陣営も復活を期待していますが、かつてのような『復権』という感じではなさそうですね。というのもダノンザキッドは元々、前走の関屋記念(G3)の後は22日の富士S(G2)が予定されていたそうです。
ところが、同厩のダノンスコーピオンも富士Sで始動することが決まった兼ね合いで、ダノンザキッドは急遽、毎日王冠からスタートすることに……。
本馬はデビュー2戦目からずっと『ダノン』のエース騎手である川田将雅騎手が騎乗していましたが、毎日王冠には川田騎手のお手馬レイパパレも出走するため、今回は戸崎圭太騎手との新コンビで挑むことになりました」(競馬記者)
ダノンスコーピオンといえば、今春のNHKマイルC(G1)を制した3歳マイル王だ。有力馬揃いの“ダノン軍団”の新エースとして期待されるほどの大物である。それもダノンザキッドと同じ安田隆厩舎の所属であり、主戦も川田騎手だ。
結果的に後輩に道を譲った形になったダノンザキッドだが、元々22日の富士Sに向けて調整されていたものが、急遽9日の毎日王冠に約2週“前倒し”されたのだから調教のピッチが上がるのも当然か。
1週前追い切りは「自己ベスト更新」と言われれば一見聞こえはいいが、それだけ厳しい追い切りをする必要があったという見方もできる。
「ダノンザキッドは今秋、マイル路線に進むことが濃厚でしょうし、順調にいけばマイルCS(G1)でダノンスコーピオンと初対決を迎えることになると思います。ただ、川田騎手はおそらく後者に乗っていると思いますね。
今回の毎日王冠における戸崎騎手への乗り替わりは、川田騎手がレイパパレとコンビを組んだ関係もありますが、先々を見据えてのチェンジだと思います」(同)
常に結果が問われる世界だけに、不振によって“序列”が下がってしまうことはダノンザキッドに限った話ではない。有望な後輩に押しやられたという悲しい立場だが、どんな事情にせよ、今回の仕上がりは良さそうだ。
かつての2歳王者として、まずは毎日王冠で結果を出し、ファンはもちろん、関係者にも「復活」をアピールしておきたい。