計画通り? 伝説の「ミナレット作戦」に泣いたC.ルメールと笑った横山和生
8日、東京11RのサウジアラビアRC(G3)はドルチェモア(牡2歳、栗東・須貝尚介厩舎)が優勝した。
桜花賞馬アユサンを母に持つ同馬の快走や、圧倒的人気に支持されたノッキングポイントの不発など語るべき点は多いが、レース結果全体に影響を与えたという意味でもグラニット(牡2歳、美浦・大和田成厩舎)の大逃げは外せないだろう。
最内枠から好スタートを決めたグラニットは、嶋田純次騎手が促して迷わずハナをきる。最初の3ハロン通過は34.8秒と決してハイペースではなかったが、2番手のドルチェモアはこれを追わず、この時点でグラニットと後続馬群の間には約1秒の差が生まれた。
その後もグラニットはペースを緩めずに進み、後ろとの差を大きく広げて直線を迎える。同馬はラスト600-400mの地点で11.1秒という最速ラップを踏んだこともあり、後続との差はなかなか詰まらない。
嶋田騎手も「『おっ』と思ったんですが」と語ったように、グラニットは最後まで粘りを見せ、結局この馬を捉えられたのは番手につけた勝ち馬ドルチェモアだけだった。勝ちを意識できる展開だっただけにレース後には「悔しい」と話した嶋田騎手だが、9頭立て7番人気の馬を2着に持ってきた騎乗は見事であった。
伝説の「ミナレット作戦」とは…
そして、この“下剋上”をもたらした大逃げ作戦は、あの伝説のレースを意識したものだったという。
グラニットのオーナーである(有)ミルファームの代表・清水敏氏は自身のTwitterで「大和田成調教師&嶋田純次騎手とは“ミナレット作戦”でいこうと打ち合わせをしていました」と語っている。
ミナレットは同オーナーの代表馬で、2015年のヴィクトリアマイル(G1)において単勝291.8倍の18番人気ながら3着に激走し、3連単2070万円の高配当をもたらしたことでも有名だ。
ミナレットが一世一代の走りを見せたヴィクトリアマイルも、後続を離した逃げであった。その再現に見事成功したグラニット陣営はしてやったりだろう。
そして、この大逃げは人気馬2頭の明暗も分けることになった。
「勝ち馬のドルチェモアにとっては良い展開でした。自身の1000m通過がほぼ60秒。2番手ではありますが、事実上スローのマイペースで逃げるような形になりました。横山和生騎手が『届くだろうと思っていた』とコメントしている通り、無理にグラニットを追いかけず、馬の力を信じた騎乗がハマりましたね。
一方の1番人気ノッキングポイントは展開に泣かされました。
出遅れて後方からの競馬になってしまい、32秒台の脚を使わないとドルチェモアには届かなかった計算になります。C.ルメール騎手は大逃げの嶋田騎手と、あえてついて行かなかった横山和騎手にしてやられましたね」(競馬記者)
元JRA騎手の安藤勝己氏も自身のTwitterで「掲示板組の勝負付けは済んでない」と振り返ったように、同じメンバーで再び走っても展開次第で着順は入れ替わりそうだ。
2歳マイル路線の中心的存在になってきそうなサウジ組の今後が楽しみになるとともに「競馬には何があるか分からない」と改めて考えさせられる一戦になった。