過去にはレイパパレやジェラルディーナが涙、「幻の秋華賞馬」が今年も誕生!?
今年の秋華賞(G1)は、牝馬三冠を狙うスターズオンアースを筆頭に、ナミュール、スタニングローズといった春の実績馬が数多く名を連ねた。だがその一方で、春のクラシック戦線で上位に食い込んだ2頭の実力馬が、揃って賞金不足の憂き目に遭うこととなってしまった。
その2頭こそが、パーソナルハイ(牝3歳、栗東・矢作芳人厩舎)とピンハイ(牝3歳、栗東・田中克典厩舎)である。
パーソナルハイは1勝馬の身で抽選を突破して桜花賞(G1)へと出走を果たすと、17番人気の低評価を覆す6着とまずまずの好走を見せた。その後は強行軍ともいえる中1週で臨んだフローラS(G2)で2着に好走し、オークス(G1)への優先出走権の確保に成功。使い詰めが響いたのかオークス本番では惨敗を喫してしまったが、秋の活躍が期待される1頭であった。
もう1頭のピンハイは、デビュー2戦目で臨んだチューリップ賞(G2)において、13番人気の下馬評を覆す2着に激走。その後は桜花賞、オークスへと駒を進めるが、この大舞台でも13番人気の低評価ながら、それぞれ掲示板に食い込む活躍をみせていた。馬券圏内突入こそあと一歩届かなかったが、この2戦では共に上がり3ハロン2位のタイムをマーク。世代上位でも通用する末脚の鋭さを示したといえる。
決して高くはなかった戦前の評価を覆して、春のクラシック戦線で確かな存在感を放って見せた2頭。この結果を受けて、秋の更なる活躍に期待を寄せたファンも、少なからずいたのではないだろうか。
しかしパーソナルハイは秋初戦として臨んだ秋華賞トライアル・ローズS(G2)で大敗を喫してしまい、優先出走権の確保に失敗。以前から自己条件での復帰を明かしていたピンハイと共に秋華賞に登録したものの、今年は収得賞金1500万円の3勝馬たちが出走のボーダーに……。両陣営も「あわよくば」の気持ちだったはずだが、収得賞金1450万円の2頭は抽選対象にすらならずに除外対象となってしまった。
奇しくもこの2頭は、秋華賞の直前に行われる阪神10R・西宮S(3勝クラス)へと回ることになった。秋華賞の舞台へ立てなかった無念を今後の重賞戦線で晴らすべく、このレースでオープン昇級をかけて激突することとなる。
「幻の秋華賞馬」が今年も誕生!?
実はこの秋華賞直前の第10Rは近2年の勝ち馬が秋華賞を除外となった馬であり、それぞれが後の重賞戦線で活躍をみせている「出世レース」としての側面を持っている。
昨年の西宮Sには、秋華賞を賞金不足により除外となったジェラルディーナが快勝。芝1800mの条件で行われたこのレースの走破時計1分46秒1は、直後に行われた秋華賞における1800mの通過タイムよりも2.2秒も速いものであった。
距離やメンバー、展開などが異なるために単純な比較は難しいが、仮にジェラルディーナが秋華賞の舞台で西宮Sと同様のラップを刻んでいたならば、残り1ハロンの段階で後続に2秒以上もの差をつけていたことになる。
タイムを見る限りでは、ジェラルディーナが秋華賞でも通用した可能性は十分にあったはずだ。こうした経緯もあってファンの一部ではジェラルディーナを「幻の秋華賞馬」と評する声も出たほどである。
そのジェラルディーナは後の重賞戦線で惜しい競馬を続けていたが、先月のオールカマー(G2)で念願の重賞初制覇を達成。およそ1年前に脚光を浴びた実力が本物であったことを証明してみせた。
一昨年、秋華賞の直前に行われたのは大原S(3勝クラス)。このレースではデビューから無傷の3連勝で大きな注目を集めながらも、抽選に漏れて秋華賞の舞台へと立てなかったレイパパレが出走していた。
レイパパレは大舞台へ立てなかった悔しさを晴らすかのような快勝をみせると、そこからチャレンジC(G3)、大阪杯(G1)とデビューからの6連勝を達成し、無敗のままにG1制覇の栄冠を手にした。
この大阪杯ではコントレイル、サリオス、グランアレグリアといった錚々たる面々を全く寄せ付けずに勝利したことを考えれば、出走が幻となった秋華賞で三冠牝馬デアリングタクトと好勝負を演じることも可能であったかもしれない。
このように秋華賞直前のレースではあるが、過去2年で「幻の秋華賞馬」が誕生した準メインの勝ち馬2頭は、共に重賞制覇を成し遂げている。秋華賞の舞台には一歩届かなかったピンハイ、パーソナルハイの2頭はこの出世レースに勝利し、ジェラルディーナやレイパパレに続く活躍を果たせるだろうか。
秋華賞はもちろんだが、今週末はその直前に行われる西宮Sにも注目したい。