武豊「神騎乗」匂わす完全一致、菊花賞最多勝男に3年前のデジャブ?

武豊騎手 撮影:Ruriko.I

 スタニングローズが優勝した秋華賞(G1)が終わり、今週末は牡馬クラシックのラスト一冠となる菊花賞(G1)が行われる。

 皐月賞馬、ダービー馬のみならず、それぞれの2着に入った馬すら出走しないケースは65年ぶりとのこと。抜けた馬がいないだけに、「長距離は騎手で買え」という競馬の格言も大いに参考となりそうだ。

 となると、当然ながら長距離戦の第一人者である武豊騎手の存在を抜きには語れない。

 53歳になってもなお、一線級で活躍するレジェンドは、これまで芝3000m以上のG1である天皇賞・春を8勝、菊花賞を5勝と大の得意としており、どちらも最多勝。一時代を築いた天才は、まさに「長距離は騎手で買え」を体現している。

 そんなレジェンドが今年の菊花賞でコンビを組む相手が、神戸新聞杯(G2)で2着に食い込み、優先出走権を勝ち取ったヤマニンゼスト(牡3、栗東・千田輝彦厩舎)だ。

 2走前の藻岩山特別(2勝クラス)をドゥラドーレスの6着に敗れ、神戸新聞杯でも12番人気とほぼノーマークに近い評価だったが、名手に導かれたこのレースで後方から鋭く末脚を伸ばして上位人気馬に先着。ここで権利を取れなければ、菊の舞台に出走することも叶わなかった。

 神騎乗と持て囃された武豊騎手も、菊花賞でこれといったお手馬がいなかったため、初騎乗の馬で、見学という事態を回避することにも成功したのである。滑り込みでチケットを手に入れはしたものの、戦前の下馬評でも前走同様に人気薄が見込まれるだろう。

菊花賞最多勝男に3年前のデジャブ?

 かといって、さらに相手関係が強化される舞台で通用するはずがないと考えるには早計だ。「持っている男」を自認する武豊騎手らしく、20日の枠順発表で3枠5番というラッキーな枠も手に入れた。

 というのも、武豊騎手がワールドプレミアとのコンビで制した3年前の菊花賞も、3枠5番。中京競馬場ではなく阪神競馬場で行われた神戸新聞杯の着順も、2着ヤマニンゼストと近い3着だった。

 2頭とも勝ち馬から大きく離されたものの、ワールドプレミアの0秒7差に対してヤマニンゼストは0秒6差と優勢。2019年の菊花賞には皐月賞(G1)2着、日本ダービー(G1)3着のヴェロックスが出走していたが、1着馬(サートゥルナーリア、ロジャーバローズ)に関しては、どちらも参戦がなかった。

 連対馬すら出ていない今年の状況とは少々異なるが、皐月賞馬とダービー馬が不在という点においては似ているといえないだろうか。

 菊の大輪を咲かせたワールドプレミアとヤマニンゼストの共通点は、もう一つある。それは2頭ともディープインパクトの血が流れていることだ。日本最強馬の1頭といわれるターフの英雄と主戦を任されていた武豊騎手とは、切っても切れない縁のある仲。同馬が父のワールドプレミアと違ってヤマニンゼストの場合は、母の父としてその名を見つけることが出来る。

 ヤマニンゼストを管理する千田輝彦調教師も「あれだけのジョッキーが乗ってくれるのはプラスだと思います。長距離になればなるほどジョッキーのウエイトが高くなると思いますので、そのあたりは心配していないです」とレジェンドに全幅の信頼を寄せている。

 神戸新聞杯後に「乗り味も良く距離は延びても大丈夫」とコメントし、「もし菊花賞に行くなら乗る」と陣営に伝えた武豊騎手も一発の手応えを掴んだはず。後はレース本番で長距離の名手の神騎乗が炸裂すれば、3年前の再現も夢ではないかもしれない。

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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