蛯名正義厩舎「137位」からの猛チャージ!? 藤沢和雄メモリアルレースを「出来すぎ」Vで勝ち星倍増
30日、東京9Rのレジェンドトレーナーカップ(2勝クラス・芝1600m)はレッドモンレーヴ(牡3歳、美浦・蛯名正義厩舎)が勝利。NHKマイルC(G1)3着のカワキタレブリーなど好メンバーが集まった一戦を上がり3ハロン最速となる33.3秒の末脚で突き抜けた。
このレースは、今年の2月末で引退した藤沢和雄元調教師の顕彰者選定を記念して行われたもの。勝ったレッドモンレーヴはまさに藤沢和厩舎に所属していた馬であり、2月27日に挙げた勝利は同厩舎最後の白星になるなど、劇的な勝利となった。
藤沢和師から後を引継ぎ、同馬を管理している蛯名正義調教師も「上手くいきすぎました」とコメント。これ以上ないプレゼントが2人の“調教師”に贈られることとなった。
蛯名正師は技術調教師時代に藤沢和厩舎で研修するなど、藤沢和元調教師と師弟関係の印象が強い。だが、騎手時代に藤沢和厩舎の馬で挙げた勝利数は9勝と意外にも少ない。
しかし、その中には自身初G1勝利となった天皇賞・秋(バブルガムフェロー)も含まれている。この一戦は主戦の岡部幸雄騎手が、同じく藤沢和厩舎に所属するタイキブリザードと海外遠征へ臨むために回ってきたチャンスであった。
「受けて立つ競馬をしてください」と藤沢和師から指示を受けた蛯名騎手は、強気な先行競馬でサクラローレルやマーベラスサンデー、マヤノトップガンといった強豪古馬を完封。バブルガムフェローは3歳馬として59年ぶり2度目の天皇賞・秋制覇という偉業を達成し、藤沢和厩舎の天皇賞・秋通算6勝という大記録に繋がってゆく。
そんな蛯名、藤沢両氏にとって思い出深いであろう天皇賞・秋の開催日に、レッドモンレーヴが勝利したことには不思議な縁を感じる。蛯名正師は調教師を目指すと決めて以降、藤沢和師の元で学び、今年3月に藤沢和厩舎の定年時管理馬46頭のうち33頭を引き継いで開業しており、まさに“レジェンド”の後継者といえる存在だからだ。
だが開業が3月だったとはいえ、調教師リーディングは137位となっており、前年15位だった藤沢和師の後釜としては物足りない数字だ。管理馬の多くが藤沢和厩舎の解散直前に出走していた影響もあり、初勝利が5月になるなど出足の鈍かった蛯名正厩舎。
蛯名正義厩舎「137位」からの猛チャージ!?
しかし、秋の東京開催を迎えて、巻き返し体勢に入っている。
「9月終了時点で5勝に留まっていた蛯名正厩舎ですが、10月だけで5勝を荒稼ぎしました。これは全厩舎でも5位タイの数字です。藤沢和厩舎も全競馬場でダントツの595勝を挙げていた東京開催ですから“藤沢イズム”の本領発揮といったところでしょうか。
蛯名正厩舎は春の東京開催でも3勝。ここまでの10勝中6勝を東京で挙げており、11月も引き続き楽しみですね」(競馬誌ライター)
先週は2頭の出走馬が共に勝利した蛯名正厩舎。勝率に限っては12%と上位厩舎に遜色ない数字だ。今週木曜日にはテイエムサウスダンがJBCスプリント(G1)に出走予定。週末には、武豊騎手との同期コンビが話題を呼んだインスタキングが百日草特別(1勝クラス)にスタンバイするなど有力馬が控えている。
いよいよ上昇気流に乗ってきた蛯名正厩舎。このままの調子で開業一年目を突っ走ってほしい。