武豊を超えるリピーター!?「行けなくてツラい」R.ムーア「鉄仮面」に隠された日本愛
27日、東京競馬場で行われたジャパンC(G1)は、3番人気のヴェラアズール(牡5歳、栗東・渡辺薫彦厩舎)が勝利。前走の京都大賞典(G2)で重賞初制覇を飾った遅咲きが、勢いそのままに競馬界の頂点まで駆け上がった。
今週も世界の名手が魅せた。
今秋は新型コロナウイルスの規制緩和の影響もあって、3年ぶりに多くの外国人騎手が参戦。先々週のエリザベス女王杯(G1)をC.デムーロ騎手が、先週のマイルCS(G1)をD.レーン騎手が、そして今週のジャパンCをR.ムーア騎手が勝ち、3週連続で短期免許の外国人騎手が勝利。改めて世界のレベルの高さを見せつけている。
ジャパンCのヴェラアズールも、最後の直線を向いた際は前にライバルが殺到していた。しかし、ムーア騎手が巧みに馬群を縫って前に進出すると、最後はシャフリヤールのC.デムーロ騎手とヴェルトライゼンデのレーン騎手との叩き合いに。最後は「今週は私の番だ」と言わんばかりに力強く抜け出した。
「さすがの騎乗でしたね。最後の直線のエスコートも見事でしたが、いつも(馬群が)タイトな欧州で活躍しているだけあって、ムーア騎手は馬群を捌くのが本当に上手。元JRA騎手の安藤勝己さんも『開いたら躊躇なく突っ込んだ判断も凄い。全てがかみ合っての勝利』(公式Twitterより)と絶賛していましたね。
前回ジャパンCを勝ったジェンティルドンナも、7番人気のラストインパクトを2着に持ってきた時も、同じようにインを突いて最小限のロスで運んでいます。今回はまさに騎手の腕で掴んだ勝利だと思いますし、改めて『さすがムーア騎手』だと思い知らされました」(競馬記者)
「鉄仮面」に隠された日本愛
「この2年間、日本に来られなかった。また日本に来られたことをとても嬉しく思っています」
ムーア騎手といえば、いつも冷静であまり表情が変わらないことから「鉄仮面」という異名が付いていることでも有名だ。この日の勝利騎手インタビューでも相変わらずクールな一面を見せていたが、どこか嬉しそうだったのは気のせいだろうか。
無論、ジャパンCの1着賞金は4億円。騎手の取り分は5%なので、ムーア騎手は約2分半で2000万円を稼いだことになる。賞金大国と言われる日本競馬に参戦する外国人ジョッキーにとって、こんなに“美味しい”勝利はそうないだろう。
しかし、この日ムーア騎手がどこか嬉しそうだったことには別の理由があるのかもしれない。
「普段からクールでミステリアスな雰囲気のあるムーア騎手ですが、実はかなりの親日家。昨年JRAが公開したW.ビュイック騎手との対談では『日本の競馬場はどこもフェア』と“リップサービス”していた一方で『自分の一番の楽しみは食べ物。レストランは本当に素晴らしい』『滞在中の楽しみは美味しい店を探すこと』『ある種の芸術』と日本での食事について熱く語っていました」(別の記者)
そんなムーア騎手が、如何に毎年の日本遠征を楽しみにしているのかを示した興味深いデータがある。それは近年のジャパンCにおける騎乗回数だ。
ムーア騎手が初めてジャパンCで騎乗した2007年以降、当レースに騎乗しなかったのは2011年、そしてコロナ禍だった2020年のわずか2年しかない。合計14回の騎乗は、C.ルメール騎手とM.デムーロ騎手のJRA所属騎手と並んでトップタイ。騎乗機会が限られている中で、4位武豊騎手の13回を超えている。
「ムーア騎手は今秋、初来日を果たして存在感を発揮しているT.マーカンド騎手、H.ドイル騎手とは英国の先輩後輩の間柄。先日マーカンド騎手が『東京スポーツ』のインタビューに答えた際、日本に来た理由として『ムーア騎手が、日本がどれほど良い所かを話してくれた』『彼のおかげで僕とホリー(ドイル騎手)がここ(日本)にいる』と語っていました。また、香港で行動を共にした際は『日本に行けなくてツラい』と漏らしていたそうです(笑)」(同)
「ジャパンCを勝ちましたから、これからも(ヴェラアズールは期待できる)強い馬だと思います。またこの地に、日本に戻ってこられたことを嬉しく思っています。関係者のサポートに感謝します」
勝利騎手インタビューでは冒頭だけでなく、最後も日本愛で締めたムーア騎手。本来、外国人のこういった言葉はリップサービスに思われがちだが、この鉄仮面と言われるほどクールな英国人騎手に限っては、わりと“ガチ”なのかもしれない。