【有馬記念(G1)展望】タイトルホルダーVSエフフォーリア再び…間隙突くイクイノックス
25日、中山競馬場では有馬記念(G1)が行われる。今年は復活を試みる4歳馬2頭とG1初制覇を飾り勢いに乗る3歳馬による三つ巴の様相を呈している。
長距離実績で一歩抜きんでているのはG1・3勝を誇るタイトルホルダー(牡4歳、美浦・栗田徹厩舎)だ。
昨年の菊花賞(G1)でG1初制覇を遂げると、昨年の有馬記念で古馬に敢然と挑戦。横山和生騎手との初コンビで4番人気に推されたものの5着に敗れた。
昨年は大逃げを打ったパンサラッサからやや離れた2番手を追走。直線早めに先頭に躍り出ると、そのまま押し切るかに思えたが、ゴール前の急坂の前に最後は力尽きた。
長距離路線で本格化したのは今年に入ってから。始動戦の日経賞(G2)こそ辛勝だったが、天皇賞・春(G1)は7馬身差の完勝を収めると、続く宝塚記念(G1)は2馬身差ながらレコードタイムで勝利し、現役最強馬の地位に上り詰めた。
秋はぶっつけで凱旋門賞(G1)に挑戦。持ち前の先行力を武器に上位争いが期待されたが、日本ではまず経験しない極悪馬場にスタミナを奪われ、逃亡劇も実らず11着に大敗した。
その後は放牧に出され、ここを目標に11月中旬に美浦トレセンへ帰厩。速い時計はそれほど出していないが、乗り込み量は豊富だ。昨年の雪辱を期すべく態勢は整いつつある。
展開的にも今年はパンサラッサ不在で、単騎逃げが見込めそう。G1・4勝目に向けて、あとは自身のペースに徹するだけだろう。
前走の敗戦からV字回復を狙うのはタイトルホルダーだけではない。同世代のエフフォーリア(牡4歳、美浦・鹿戸雄一厩舎)も同じく復権を期す。
タイトルホルダーとは過去4度の直接対決で3勝1敗と勝ち越しているものの、今年に入ってから不甲斐ない競馬が続き、今や完全に立場は逆転している。
3歳時には無敗で皐月賞(G1)を制覇。日本ダービー(G1)こそ僅差の2着に敗れたが、古馬相手に天皇賞・秋(G1)と有馬記念を連勝。誰もがエフフォーリア時代の到来を期待した。だが、今年は大阪杯(G1)9着、宝塚記念6着。2戦連続の凡走で世代最強馬の称号をタイトルホルダーに明け渡した格好だ。
この秋は天皇賞・秋から始動を予定していたが、脚部不安のため回避。9月に乗り運動が再開されるも、結局、今年の下半期は有馬記念に“一鞍入魂”となった。
放牧先のノーザンファーム天栄から美浦に帰厩したのは11月末。2週間以上も早く帰厩したライバルのタイトルホルダーに比べると乗り込み量も豊富とはいえず、春2戦の走りを見る限り、期待よりも不安の方が大きいのが実情だろう。
それでも14日の1週前追い切りでは3頭併せの真ん中で最先着を果たし、徐々にピッチは上がっている。光明があるとすれば、凱旋門賞で極悪馬場を走った疲労が心配されるタイトルホルダーに比べてフレッシュな点か。
そんなエフフォーリアの鞍上を務めるのはもちろん横山武史騎手。1週前追い切り後には「大きく変わったということではないが、間違いなく春より良くなっています」と良化途上をアピール。「去年の有馬記念くらいから手前をうまく替えられずにいましたが、今日は不器用ながらも一発で替えてくれました」と、春との違いを語った。
有馬記念連覇なら、02-03年のシンボリクリスエス以来、19年ぶりの快挙。再び現役最強馬に君臨するためにも落とせない一戦となるだろう。
前走大敗を喫した4歳馬2頭に対して、イクイノックス(牡3歳、美浦・木村哲也厩舎)には勢いがある。
春は皐月賞とダービーで惜しい2着に敗れ、G1タイトルを逃がしたが、秋の天皇賞で古馬を撃破。パンサラッサが打った渾身の大逃げをゴール直前で差し切って悲願のG1勝利を遂げた。
中山コースは皐月賞で経験しているものの、これまでの走りからベストの距離は2000m。コーナーを6つ回る中山の2500mは歓迎とはいえないだろう。若干の距離不安も抱えるだけに、道中は内々をうまく立ち回って脚を溜めたいところ。
デビューから手綱を取り続けているC.ルメール騎手なら仕掛けどころを間違えることもないだろう。イクイノックスがG1・2連勝を飾れば、一気に世代交代を告げることになるかもしれない。
勢いという点でイクイノックスの上を行くのがヴェラアズール(牡5歳、栗東・渡辺薫彦厩舎)だ。
デビューからダートを使われていたが、今春に芝路線へ転向すると一気に才能が開花。ジューンS(3勝クラス)から3連勝でジャパンC(G1)を制した。
その前走はテン乗りのR.ムーア騎手を背に道中は中団やや後方を追走。直線でなかなか進路が見つからず厳しい競馬となったが、狭いところを割ると、ゴール前で先に抜け出したシャフリヤールとヴェルトライゼンデをまとめて差し切った。
今回は鞍上が2走前の京都大賞典(G2)でコンビを組んだ松山弘平騎手に替わるが、目下の勢いなら06年ディープインパクト以来となる同一年のジャパンC→有馬記念制覇も決して夢ではない。
4頭いる牝馬の中で最も戴冠に近いのはジェラルディーナ(牝4歳、栗東・斉藤崇史厩舎)だろう。
名牝ジェンティルドンナの仔として、2歳時から才能の片鱗をのぞかせていたが、出世にはやや時間を要した。3歳夏から秋にかけて自己条件を3連勝し、一気にオープン入りするも、その後は重賞で古馬牡馬の壁にぶち当たった。
ようやく軌道に乗ったのは2走前のオールカマー(G2)。展開とトラックバイアスも味方につけ、重賞初制覇を飾ると、前走のエリザベス女王杯(G1)でも快勝を収め、超良血馬が完全に本格化した。
鞍上は前走に続き短期免許で来日中のC.デムーロ騎手が務める。今回の来日ではすでに2度の騎乗停止処分を受けているため、来年の来日は叶わない。年末の大一番で一仕事して帰国の途に就きたいところだろう。
昨年の2着馬ディープボンド(牡5歳、栗東・大久保龍志厩舎)も不気味な存在だ。
昨年はフォワ賞(G2)1着後、凱旋門賞では最下位14着に敗れた。その後は帰国初戦で見事な巻き返しに成功したが、今年も凱旋門賞惨敗(18着)から帰国初戦でグランプリに臨む。
ローテーションは秋3戦目だった昨年に対し、今年はこれがまだ2戦目。ダメージという点では昨年以上の状態で出てくる可能性もありそうだ。鞍上は凱旋門賞で初コンビを組んだ川田将雅騎手が引き続き務める。
今年の菊花賞からは2~3着に好走した2頭が参戦を予定している。
前走で上がり最速の末脚を繰り出し、アスクビクターモアにハナ差まで迫ったボルドグフーシュ(牡3歳、栗東・宮本博厩舎)の鞍上に指名されたのは、グランプリレースで通算「0-1-2-30」の福永祐一騎手。自身最後のグランプリ騎乗で、待望の初勝利を狙う。
菊花賞でボルドグフーシュから半馬身差の3着だったジャスティンパレス(牡3歳、栗東・杉山晴紀厩舎)。2走前の神戸新聞杯(G2)の勝ち方から、3000m→2500mへの距離短縮はプラスとなりそう。中山コースもホープフルS(G1)2着の実績があり、不安はない。
この他には、昨年のエリザベス女王杯覇者のアカイイト(牝5歳、栗東・中竹和也厩舎)、六社S(3勝クラス)、アルゼンチン共和国杯(G2)を連勝中のブレークアップ(牡4歳、美浦・黒岩陽一厩舎)、武豊騎手と4度目のコンビを組むアリストテレス(牡5歳、栗東・音無秀孝厩舎)などが控えている。
タイトルホルダーとエフフォーリアを中心とした古馬勢が意地を見せるのか、それともイクイノックスを筆頭とする3歳勢が勢いで頂点に立つのか。グランプリの名にふさわしい顔触れがそろった一戦は、25日の15時25分に発走を予定している。