C.ルメール「G1ホースだと思う」も笑顔なし!? 青葉賞(G2)完勝で安藤勝己氏から太鼓判も、スキルヴィングで「日本ダービー当確」にならない理由
「まあ、G1ホースだと思いますね」
最大級の賛辞が飛び出したものの、笑顔満開とはいかなかったようだ。
29日、日本ダービー(G1)と同じ東京・芝2400mで行われた最重要トライアル・青葉賞(G2)は、1番人気のスキルヴィング(牡3歳、美浦・木村哲也厩舎)が勝利。3連勝で頂上決戦に大きく名乗りを上げた。
15頭立て芝2400mのレース。後方から外々を回る競馬は、主戦のC.ルメール騎手が「安全に乗った」という横綱相撲。単勝1.7倍の大本命馬らしく、最後の直線では楽な手応えで抜け出させるかに思えたが、内から2番人気のハーツコンチェルトが激しく抵抗したことでやや雲行きが怪しくなった。
「結果的に半馬身差でスキルヴィングが勝ちましたが、単勝1.7倍と抜けた存在と思われていただけにルメール騎手にとっても、接戦になったのはやや想定外だったかもしれません。
もちろん、ハーツコンチェルトも昨年の東京スポーツ杯2歳S(G2)で単勝1.8倍に推されたほどの素質馬。3着以下には2馬身以上の差を付けていますし、トライアルとしては上々の結果と言えますが、ルメール騎手が満足したかというと微妙なところですね」(競馬記者)
打倒・皐月賞馬ソールオリエンスへ――。ルメール騎手には現時点で2つの選択肢がある。1つは皐月賞で3着したファントムシーフとのコンビ継続。そして、もう1つがコンビを解消して、このスキルヴィングと日本ダービーへ挑む選択だ。
レース後には、元JRA騎手の安藤勝己氏がTwitterで「ソールオリエンスのライバル筆頭で、ルメールはこれに乗るんやないかな」と太鼓判を押すなど、ネット上ではスキルヴィングが“ルメール争奪戦”を一歩リードしたような風潮だが、記者は「まだわからない」という。
「ルメール騎手×木村厩舎のキタサンブラック産駒は、昨年の年度代表馬イクイノックスと同じ。そういった背景もあって、スキルヴィングに『イクイノックス2世』という声もありますが、ルメール騎手が『ちょっと(成長が)遅かった』と話している通り、現時点での完成度は昨年のイクイノックスの方が上です。
陣営も戦前から『まだ体質の弱さがあるので、いかに余力を残して勝つかが重要』と語っており、日本ダービーに進むかは『勝って、尚且つレース後のダメージが少なければ』という条件付き。その点を踏まえれば、今回の半馬身差は微妙なところだと思いますね」(同)
実際に、青葉賞後にダービーへの抱負を尋ねられた木村調教師は「まず、無事ならばですね」とコメントしている。前向きな発言にも受け取れるが、やはり慎重を期してということなのだろう。
つまり、仮にルメール騎手がスキルヴィングの方に気が合ったとしても、陣営からゴーサインが出るとは限らないということだ。
「皐月賞で1番人気を裏切ってしまい評価を落としているファントムシーフですが『向正面で後ろ脚を落鉄していた』(ルメール騎手)と敗因は明らか。『バランスが取りづらくて走りづらそうだった』と重馬場に苦しみながらの3着は、そう悪い結果ではありません。
ルメール騎手も、もともと皐月賞前の共同会見で『良いポジションを取れれば勝てそう』と話すほど評価している馬。スキルヴィングのパフォーマンスに満足できなければ、こちらを選択する可能性も十分だと思います」(別の記者)
「ダービーの日はトップコンディションになるでしょう」
そんなルメール騎手のコメントは、もしかしたらスキルヴィングの更なる上積みを願ってのものだったかもしれない。
記者曰く「スキルヴィングがノーザンファームの馬で、ファントムシーフはターフ・スポート(谷川牧場産)の馬。最終的には、これが決め手になるかも」とのこと。いずれにせよ近日中には、このフランス人ジョッキーがどちらに騎乗するのか明らかになるはずだ。