キタサンブラック世代「無事是名馬」がJRAの大記録を更新!「11歳でも、凄く元気いっぱい」19歳ルーキーも敬意を払った異色のキャリア
まさに無事是名馬だ。
1日、中山のスプリンターズS(G1)の余韻も冷めやらぬ中、阪神最終レースを制したのは、12番人気のマイネルプロンプト(セン11歳、栗東・坂口智康厩舎)。JRAの平地最高齢勝利を約10年10カ月ぶりに更新する勝利となった。
「11歳でも、凄く元気いっぱい」
鞍上の田口貫太騎手はそう評価するが、11歳といえば2012年生まれ。現在、種牡馬として活躍するキタサンブラックと同世代だ。ちなみにこのレースで2番目に高齢だったのは6歳のドゥーベ。周囲の馬たちからすれば、それこそ仙人のような存在にも見えていたかもしれない。
実はG1・3着の実績もあるマイネルプロンプト。一体、何者なのだろうか。
「普通に出ていれば、勝っていたと思うんですけど」
9年前の2014年8月、マイネルプロンプトはデビュー2戦目の未勝利戦で3着に敗れている。
ソエ(管骨の骨膜炎)の影響もあってスタートで後手を踏んだ本馬は、最後の勝負所で上がり3ハロン最速の末脚で追い上げるも3着。勝ったトーセンバジルは翌年の弥生賞(G2)で5着、神戸新聞杯(G2)では3着。古馬になって香港ヴァーズ(G1)で3着するなど重賞戦線で活躍すると、最後は豪州に移籍した。2着サトノラーゼンも翌年の日本ダービー(G1)2着馬である。
若きマイネルプロンプトは、そんな未来の大物たちと1馬身+クビ差の接戦を演じた素質馬だったが、気性面の問題もあって、まさかのデビュー11連敗で園田競馬へ移籍……。そこからの彼の馬生は文字通りの紆余曲折だ。
園田で3連勝して再び中央へ戻ってくると、500万下(現1勝クラス)で活躍。2016年8月には、待望のJRA初勝利を飾っている。4歳を迎えたマイネルプロンプトは、この時すでにセン馬となっていた。新たな主戦に武豊騎手を迎えた同期のキタサンブラックが天皇賞・春(G1)を制した年の夏の話である。
その後、1000万下(2勝クラス)で大敗続きだったマイネルプロンプトは、平地から障害へ転向して素質が開花。重賞こそ勝てなかったものの、2019年の中山グランドジャンプ(G1)で3着するなど、当時の絶対王者オジュウチョウサンを苦しめた。ちなみにこの時、キタサンブラックはすでに引退し、種牡馬入りしている。
さらにその後、年齢による衰えか障害でも結果が出なくなったマイネルプロンプトは、昨年12月に再び平地へ復帰。2勝クラスに名を変えた1000万下に挑戦して4着と善戦している。ちなみに昨年12月と言えば、キタサンブラック産駒のイクイノックスが有馬記念(G1)を勝ち、年度代表馬の座を決定的なものにしている。
そして、迎えた2023年10月。マイネルプロンプトはキャリア62戦目(平地30戦目)にして、待望の……いや、悲願の2勝クラス突破を決めた。4250mの障害G1の3着馬だが、勝った舞台はダート1400mというから競馬はわからない。
「最後までよく頑張ってくれたと思います。馬に感謝したいです」
レース後、そうマイネルプロンプトに感謝した田口騎手は今年デビューしたばかりの19歳。“デビュー10年目”の相棒から学ぶことは少なくないはずだ。勝てば勝つだけJRAの平地最高齢勝利の記録更新となる“異色のコンビ”の今後にも注目だ。