“超スロー”の日本ダービー(G1)にあった既視感の正体…「ピンチをチャンス」に変えた池添謙一の決断に「レイデオロ巻き返し」のヒントあり?

先日の日本ダービー(G1)を制したのは、前走の皐月賞(G1)を競走除外となり、9番人気まで評価を落としていたダノンデサイルだった。横山典弘騎手が1か月前に下した苦渋の決断が間違いではなかったことを自ら証明した形だ。
ダノンデサイルの勝因は、横山典騎手の言葉を借りれば「ちょうどいいポケットに入れて、直線までじっとできた」ことに尽きるだろう。「最後はよく弾けてくれました」と大ベテランが話したように、無敗の皐月賞馬を2馬身も突き放した末脚はまさに“ダービー馬”にふさわしいものだった。
今年のダービーは大外枠からエコロヴァルツがハナを切ったが、1000m通過が62秒2の超スローペース。4コーナーで中団~後方の集団にいた馬で上位に入ったのは3着シンエンペラーと5着レガレイラくらい。あとは軒並み二桁着順に沈んだ。

そんな中、スタート直後の最初のコーナーを最後方17番手で入った15番人気のサンライズアース(牡3歳、栗東・石坂公一厩舎)は、大健闘といえる4着に好走した。
「最内枠からスタートは五分に出たものの、鞍上の池添謙一騎手が『二歩目のスピードの乗りがもう一つだった』と話したように、序盤は後方からの競馬を強いられました。『内枠だけに先行するつもりだった』という作戦が叶わず、いきなりピンチを迎えたといってもいいでしょう。
しかし、バックストレッチに入って後方2番手にいたコスモキュランダがマクっていくのを見た池添騎手は、ワンテンポ遅れて追いかけるように進出を開始。3コーナーまでに2番手に押し上げましたが、ペースを考えれば結果的に好判断でしたね」(競馬誌ライター)
ちなみにコスモキュランダに跨っていたM.デムーロ騎手といえば、同じくスローペースで流れた2017年のダービーで1番人気のアドミラブルに騎乗。その時は道中後方で脚を溜め、直線の爆発力に懸けたが、早めに動いたレイデオロに押し切られ、3着に敗れる苦い経験があった。
デムーロ騎手はその記憶もあったのか、今年のダービーでは早めに仕掛けていったものの、最後の直線で伸びあぐねて6着という結果に終わった。
そんなデムーロ騎手とコスモキュランダを3コーナーで交わしにかかり、先頭のエコロヴァルツに並びかけていったサンライズアース。同馬の父こそが7年前のダービーを制したレイデオロである。
「レイデオロ巻き返し」のヒントあり?
現役時代にダービーと天皇賞・秋(G1)を制覇したレイデオロは、2019年暮れに引退、翌年に種牡馬入りした。そして2021年に生産された130頭のうちの1頭がサンライズアースである。
キングカメハメハの後継候補として大きな期待を背負って種牡馬入りしたレイデオロだが、産駒はいまだ重賞勝利なしと苦しんでいる。種牡馬としても同期のスワーヴリチャードが重賞を4勝(うちG1・1勝)しているのと比べると、期待に応えているとは言い難い成績だ。
ただし、今回のダービーに種牡馬レイデオロが巻き返すためのヒントが隠されているかもしれない。
「サンライズアースが採った戦法はいわゆる“マクリ”と呼ばれるもの。父レイデオロ自身が7年前のダービーでC.ルメール騎手を背に見せたのも“マクリ”でしたね。実はレイデオロの産駒は今回のサンライズアースに限らず、マクった時に好成績を残しているんです」(同)
マクリの定義は多少アバウトながら、レイデオロ産駒がデビューした昨年6月以降の1年間で、種牡馬別のマクリ勝利数1位だったのがレイデオロで4勝だった。他にハーツクライ、ホッコータルマエ、そしてヘニーヒューズの3頭の産駒も4勝ずつしているが、芝のレースに限るとレイデオロが4勝で、2位に2勝差をつけている。
マクリは、距離や展開、枠順、コース取りなど様々な要素がうまくかみ合った時に採られる戦法。なかなか狙ってできるものではない。ただ、自身がその戦法で世代の頂点に立ったように、産駒にもその遺伝子が組み込まれているのかもしれない。産駒のデビューから1年がたとうとしている種牡馬レイデオロもここから一気にマクっていきたいところだ。
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