「13票生存」も1番人気でわずか1票!荒れに荒れたWIN5の怪…なくなったに等しいキャリーオーバーの魅力

 京都で京都大賞典(G2)、東京で毎日王冠(G2)、日本時間夜には凱旋門賞(仏G1)と注目のレースが行われた先週末。グレード制導入後、初めてG1馬不在となった毎日王冠にも驚かされたが、WIN5でもちょっとした怪現象が起きていた。

 WIN5とは、「JRAが指定する5つのレースそれぞれで1着になると思う馬を選び、5レース全ての1着馬を当てる馬券」だが、この日指定された対象レースは、京都10R藤森S、東京10RグリーンチャンネルC、新潟11RトルマリンS、京都11R京都大賞典、東京11R毎日王冠の5レースだった。

的中1票のWIN5で怪現象?

 1レース目の藤森Sを7番人気の伏兵クインズメリッサが制し、早くも不穏な雰囲気が漂う中、2レース目のグリーンチャンネルCを11番人気の大穴ショウナンライシンが内からスルスルと抜け出して勝利。この時点で総票数677万7614から残り票数も5170票(0.0763%)まで激減した。

 続く3レース目は4番人気ピースオブライフが勝ったとはいえ、大きく票を減らして418票。8番人気シュヴァリエローズが京都大賞典を勝った頃には、わずか13票(0.0002%)しか生き残っていなかった。

 だが、最終関門となる毎日王冠を残して13票。しかも勝ったのが1番人気シックスペンスなら、おそらく3票くらいは的中しているかと思いきや、発表された結果はまさかの的中1票。ハズれた12票は2番人気以降の馬を買っていたことになる。WIN5が最も難しい馬券であることは確かだが、この結果に驚きを隠せなかったファンも少なくなかったのではないか。

 そこで仮説に過ぎないことを承知の上で推察してみると、もしかしたら4レース目が終了した段階で、生き残っていたのは1人だったという可能性も浮上した。

 あくまで想像の話ではあるが、的中者は毎日王冠で13点買いをしていたのではないかという予想だ。14頭立てのレースで1頭だけ買わないのは、最悪のケースも想定されるが、最低人気のエアファンディタは単勝281.0倍の超がつく人気薄。実際どの馬を買わなかったのかは不明ではあるが、十分ありそうな馬でもある。

 いずれにしても「4億6836万5660円」もの大金を独り占めできたのだから、まったくもって羨ましい限りだ。

 ただ、近年のWIN5はキャリーオーバーの魅力が、なくなったに等しいことも確か。直近でキャリーオーバーが出現したのも2020年7月(函館記念、中京記念)なのだから、実に4年以上も前のこと。これではキャリーオーバーの意味がほぼない。

 これまでも毎年のように「すわキャリーか」と期待させる波乱の連続もあったが、終わってみれば1票のみ残っていて夢が幻となったケースも多々。前回キャリーオーバーのあった2020年から先週までの間でも8回ほど的中1票があった。

 大本命馬の出遅れや競走中止、超人気薄の行ったままの逃げ切りなど、まさかの結末も多いだけに人知を超えた的中といえるかもしれないが、大量の軍資金にモノを言わせて予想を放棄しての的中なのか、はたまた凄腕のAI予想で拾っている可能性もあるか。

 その一方で、2014年からJRAが払戻最高限度額を2億円から6億円に引き上げたこともキャリーオーバーの出現に大きな影響を与えた。それまでは的中が1票あったとしても2億円を引いた残りが翌週に繰り越され、それがキャリーオーバーになった訳だが、これがなくなったことで総取りも実現。その結果、キャリーオーバーは滅多に出現しなくなってしまった。

 「キャリーオーバー」という響きだけで大きく売上げ増を見込めるため、こちらについてはJRAの選択も善し悪しだったようにも感じられる。たった1人が幸せになるよりも購入者すべてにチャンスのあるキャリーオーバーがある方が、馬券も売れるはずだからだ。

 堅かろうが荒れようが胴元のJRAにとっては他人事であるものの、全体の売り上げが増えるほどJRAの取り分も増えるのだから、そういう意味では悪手だったといえるのかもしれない。

高城陽

大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。

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