JRAが降級制度「廃止」決定……何故馬主の「猛反対」は実らなかったのか? 肥大する「格差問題」を前にオーナーたちが一枚岩になれない事情


 あくまで結果論に過ぎないが、安田記念でエアスピネルよりも上位だった4頭はいずれも年明け2戦以下だった。そのことを考えれば、仮に本馬が降級を気にせずフレッシュな状態で出走していれば、結果もまた変わったかもしれないということだ。

 無論、これは一例に過ぎない。だが、条件戦をトントン拍子で勝ち上がれるような素質馬にとって、降級して無駄なレースに出る必要がなくなることは紛れもない歓迎材料だ。

 それと同時に”弱者”が早期引退を余儀なくされることで、結果的に下級条件のレース数が減少。その穴を埋めるようにオープンレースが増えることで、”強者”はよりスムーズに出たいレースに出られる環境ができ上がるというわけだ。

 したがって、降級制度の廃止でメリットを得る馬主も確実に存在するということだ。特に「強者」つまりはオープンクラスの馬を数多く所有する大馬主にとっては恩恵となる可能性が高く、そういった馬主ほど必然的に協議の発言力も増す。

 今回の降級制度廃止に関して、異を唱えていた馬主側が一枚岩となれなかった背景には、そういった事情もあるようだ。

 そして、何より「競走馬のサイクルが加速する」ことで、最も大きな恩恵がありそうなのは馬主に馬を売る生産者だ。具体的に述べれば、オープンクラスの馬を数多く所有し、同時に日本一の生産集団でもある社台グループにとって今回の決定は、何かと恩恵がありそうだ。

 ただ、これも一概には言えない。

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