「完璧」ゆえに切ない……ダービー4着エアスピネル×武豊の今後とファンの感動
大激戦の末にマカヒキの勝利で幕を閉じた日本ダービー(G1)。鞍上の川田将雅騎手は5大クラシック完全制覇を13年目で達成という快挙を成し遂げた。敗れたサトノダイヤモンド、ディーマジェスティも最強世代の名にふさわしい走りを展開。見応えあるダービーだったといえるだろう。
その影で、またも馬券圏内に届かず涙を飲んだのが武豊騎乗・エアスピネルだ。
皐月賞に続き、ダービーでも4着。敗れた3頭が皐月賞とまったく同じだけに、悔しさはより大きい。
それも、同馬は常にこれ以上ないほぼ完ぺきなレースを常に展開している。好位につけ、早め先頭からの粘りこみを狙う武豊騎手の手腕は見事という他なく、エアスピネル自身も鞍上の指示を忠実に実行している。競走馬としてのバランス、完成度だけなら世代No.1と言っても過言ではない。
しかし、それでも上位3頭には及ばない。毎回100点の騎乗をしているからこそ、マカヒキ他最強の上位勢に決定的な差をつけられて敗れることの意味は非常に大きい。「これ以上何をどうすればいいのだ」という状況なのである。
武騎手も「ベストは尽くせた」とレースを振り返っている。そう、まさにその通りで、誰も文句はないだろう。誰もが納得した形で敗れた、だからこそ切ない。
しかし、競馬ファンは常に最高のレースを見せてくれるエアスピネルと武騎手に賛辞を惜しまない。「最近では珍しく応援したい馬」「いつか大きいところ勝てるよ」「ずっと応援したい」と喝采。勝てないながらも懸命に勝負を挑む姿は、応援せずにはいられない。
当然だが、エアスピネルは世代屈指の強豪であることは紛れもない事実。皐月賞・ダービーの上位を独占した「5強」以外には敗れたことがなく、他馬との差は圧倒的だ。ダービーでは、ついにライバル・リオンディーズにも先着した。エアスピネルもまた、少しずつ成長しているということの証明ではないだろうか。
エアスピネルの競走馬生活はまだ序盤。今後は距離適性を考えてマイル~2000にシフトするというウワサもあるが、いずれにせよ、エアスピネルは現時点でG1を勝つ器は十分にもっているといえるだろう。
(文=利坊)