あまりに「残酷」な現実を突きつけられたC.ルメール騎手。募らせ続ける日本ダービーへの「思い」とは
無論、仮にルメール騎手がマカヒキを選んで入れさえすれば、日本ダービー制覇を成し遂げられていたというつもりはない。実際の着差は僅か8㎝であり、サトノダイヤモンドも落鉄さえなければ逆転していたかもしれない。
だからこそ、今年の日本ダービーの雌雄は様々な要因が重なった「ほんの僅かな差」で決したのだ。サトノダイヤモンドとマカヒキの差は紙一重だったといえる。ルメール騎手が選択ミスを犯したと考えるのは、単なる浅はかな結果論でしかない。
「今回はハナ(差)だけ届かなかった。残念です……」
レース後、そうコメントしたルメール騎手本人が、その事実を冷静に受け入れることは決して簡単なことではないだろう。競馬に「タラレバ」は禁句だが、ルメール騎手にとって日本ダービーへの思いは、また1年間募り続けることに間違いはないのだから。
ダービーの借りは、ダービーでしか返せない。
今年は川田将雅騎手が天を見上げて、押し留めることができない感情をそのまま涙に変えて流し続けた。当然ながら、彼にも日本ダービーに対するただならぬ思い、そして悲壮たる決意が胸にあったことは、あのワンシーンがすべてを物語っている。
来年の日本ダービーでは、一体どんなドラマが待っているのだろうか。願わくばルメール騎手の「思い」が、今度こそ彼の手をすり抜けてしまわないように祈りたい。
(文=浅井宗次郎)