【徹底考察】エプソムC(G3) ルージュバック「彼女は本当に『大物』なのか。負けられない戦いで賞金を加算するには『条件』が必要だ」

【血統診断】

 母ジンジャーパンチはBCディスタフ(G1、現BCレディーズクラシック)など米G1を6勝した歴史的名牝。2007年には、最優秀古馬牝馬にも輝いている。繁殖牝馬として日本に輸入されてからはイマイチだったが、3頭目の本馬でようやく「当たり」が出た。

 母父オーサムアゲインは日本でほぼ実績がないが、母父としては帝王賞勝ちのローマンレジェンド(スペシャルウィーク)、JBCレディスクラシックを勝ったミラクルレジェンド(フジキセキ)の兄妹を出しており、サンデー系種牡馬との相性は良い。

 ただ前述した通り、母方はダート色がかなり強い血筋だ。アメリカの時計の速いダート実績は、日本の芝適正につながることも多いが、本馬の兄弟の勝ち鞍はすべてダートの中距離で挙げたもの。特に弟はダートで活躍馬の少ないディープインパクト産駒でありながら、初勝利はダートの2100mである。

 そこから導き出されるのは、瞬発力よりも持続力勝負に優れている可能性が高い血統であるということ。実際に持続力が問われやすい1800mで良績を残しているが、根幹距離にあたるG1を勝ち切れないのは、その辺りが関係しているかもしれない。

 最後に余談だが、同じマンハッタンカフェ産駒の牝馬であればレッドディザイアが芝ダート兼用だったように、一度、本馬がダートで走るところも見てみたい。

≪結論≫

『考察』で述べた通り、ルージュバックは決して弱くないが、実績からも勝ち味に遅い面がありそうだ。その上で、エプソムCのメンバーを確認すると、中山牝馬Sの1000m通過タイム「63.7秒」の流れでペースメーカーを務めたアルマディヴァンの名がある。だが、アルマディヴァンは生粋の逃げ馬ではないので、ハナを切るのはおそらくマイネルミラノになるだろう。

 ちなみにマイネルミラノがペースを作った場合、仮に単騎で逃げたとしても1000mの通過が61秒を超えることは考えにくい。

 その上で東京1800mはスタートしてから、すぐにコーナーのある癖のあるコースだ。今年は出走頭も揃いそうなので、仮にマイネルミラノが外枠に入った場合、ある程度のペースアップは避けられない。基本的には1000mで60秒を切ってくるはずだ。それはルージュバックが理想とする展開とは大きく異なってしまう。

 ただ、仮にそうなったとしてもルージュバックが大崩れすることはないだろう。何度も繰り替えずが、本馬は決して弱いわけではない。だが、理想的な展開が叶わないことが濃厚になった以上、やはり勝ち負けまでは難しいかもしれない。

 だが、逆にここをしっかりと勝ち切るようなら、秋のG1戦線では今度こそ頂点が見えてくる。ルージュバックにとっては一皮剥けるための試金石の一戦となりそうだ。
(監修=永谷研(美浦担当))

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