「1戦1勝のダービー馬誕生」中央競馬の”ボーナスステージ”と化した東京ダービー。「価値」を守るために迫られるルール改正
8日、南関東(TCK)の3歳牡馬クラシックの第二弾となる第62回東京ダービーが、大井競馬場で行われた。
果たして、クラシック第一弾の羽田盃を制したタービランスが2冠を達成するのか。それとも「大井の帝王」的場文男騎手が35回目の挑戦で悲願を達成するのか――。
地方競馬を代表するダービーとして、玄人を中心としたファンから大きな注目を集めた今年の東京ダービーだったが、結果は吉原寛人騎手の3番人気のバルダッサーレが「7馬身差という圧勝劇」を飾った。
道中は後方に控えていたものの直線入り口で先頭に立つと、あとは後続を引き離す一方の独走状態。他馬とは完全に次元の違う走りを見せ、歴史に残るワンサイドゲームで南関東3歳の頂点に立ったバルダッサーレ。
これは久々に、地方から中央競馬に立ち向かえる大物が出現したのではないかと喜んだのも束の間。筆者は、どうやら”事情”を履き違えていたらしい。
実はバルダッサーレはつい先月までJRAに所属する中央競馬の競走馬で、この東京ダービーが「地方転厩初戦」だという。
それもどんな成績かを確認したところ、JRAで13戦2勝。芝のレースで勝ち切れず、ダートに転向して未勝利を脱出。その後、500万下で8着に惨敗して評価を落としていたが、前走11番人気の低評価を跳ね返して500万下を勝ち上がったばかりだった。
つまりは、言葉を選ばなければ「どこにでもいる馬の戦績」だった。
このバルダッサーレの7馬身差の圧勝劇を見て、大井を始めとした南関東競馬、もっと言えば地方競馬のファンはどう思っただろうか。
これを中央競馬に置き換えると、「史上最強世代」と評されて大いに盛り上がった今年の日本ダービーで、いよいよ3歳馬の頂点が決まるという時に、欧州から未勝利戦とハンデキャップ競走(日本でいう条件戦)を勝った2勝馬が、いきなり7馬身差で圧勝してしまうようなものである。
蛯名正義騎手の悲願、皐月賞を勝ったディーマジェスティの2冠達成なるか。それともマカヒキ、サトノダイヤモンドの逆転か。はたまたエアスピネル、リオンディーズの巻き返しなるか。いや、今年は青葉賞馬のヴァンキッシュラン、京都新聞杯のスマートオーディンも怖いぞ……。
などと盛り上がっている時に、いきなり名前も知らない海外の”よそ者”がダービーを圧勝してしまったら「やはり世界は広いなあ」と納得できるファンがどれだけいるだろうか。誰もが冷や水を浴びせられたような心情になるのは、想像に易いはずだ。
そんなファンにとって”屈辱的”なことが、実際に今年の東京ダービーで起こってしまった。地方競馬としては破格の賞金4200万円は、先日都会から来たばかりの”転校生”にあっさりと持っていかれてしまったのだ。