JRAイチの「策士」調教師、弥生賞(G2)に「初出走馬」ら3頭投入! そのしたたかな狙い
4日に中山競馬場で開催される弥生賞(G2)。2歳王者ダノンプレミアムを筆頭に、ワグネリアン、オブセッション、ジャンダルムと3歳牡馬クラシックをリードするであろう実力派が顔を揃え、鎬を削る。
だが、強豪たちが集まりすぎたためだろう。直接対決を避けたいと考えた陣営が弥生賞を回避すると見られ、少頭数での開催が予想されていた。
ところが、である。
いざふたをあけてみると、26日時点で11頭が特別登録。このままいけば昨年の弥生賞とほぼ同頭数でレースが行われることになる。
少数頭でのレースから一転して出走馬が出揃った影には、ひとりの名調教師が関係しているという。
「『準三冠馬』とも呼ばれていたエアシャカールを管理していた森秀行調教師ですよ。今回の弥生賞にアラウン、ニシノトランザム、ヘヴィータンクの3頭出しを予定しています。ですが、アラウンは地方交流戦を1勝、ニシノトランザムもダートで未勝利戦を勝利したのみです。さらにヘヴィータンクに至ってはこのレースが初出走です。強力なライバルたちに、太刀打ちできるとはとても思えませんね……」(競馬誌ライター)
いくら勝負は時の運とはいえ、実績を鑑みると森調教師が送り出す3頭たちは無謀な挑戦を強いられているようにも見える。だが、そこには森調教師なりのしたたかな考えがあるという。
「出走奨励金狙いなのではないかと見られています。重賞競走は6着馬から10着馬までに配布されますからね。今回は11頭が出走を予定していますから、3頭が下位を独占したとしても2頭の出走奨励金はふところに入るという計算が立ちます。500万下や未勝利戦に出走させるよりも、弥生賞に出走したほうが金になると考えたのではないでしょうか?」(記者)
森調教師は競馬雑誌『優駿』に「中央競馬の枠組みの中で戦っている限り、それは定められた総賞金という”一つの山”を何百人かの調教師で奪い合っている」と以前語っていた。その枠組みの中での戦い方は、何も強い馬でクラシックに挑戦するといった”正道”だけではないということなのかもしれない。
近年の森厩舎は全盛期に比べれば成績は下降している。しかし、弱者の戦い方を貫く森調教師は所有馬に1円でも多く稼いでもらいたい中小の馬主にとって本当に力強い存在なのだろう。森調教師はこれからもこの戦い方で競馬界を生き抜いていくのかもしれない。