【徹底考察】弥生賞(G2)リオンディーズ「もう一度、誰が”最強”なのか思い知らせる必要がある」
「凱旋」
約3か月の充電を経て、2歳王者が帰ってくる。
昨年、わずか1戦というキャリアでのG1制覇。レース史上初の快挙であることはもちろん、直線だけで出走全馬を置き去りにした圧倒的な走りは、翌年の『三冠』さえ予感させた。
そう、格付けは済ませたはずだ。「完全なる一強時代の到来」を高らかに告げたはずなのだ。
しかし、戻ってきてみれば世間の様子はすっかり変わってしまっている。「今年の3歳牡馬は全体的にハイレベル」「クラシックの主役はサトノダイヤモンド」など、とんでもない……。
「人間という生き物のもっとも優れている点は、過去を忘れることができるという点だ」と誰かが言った。ただ、それは同時に”過去の記憶”への侮辱であるのかもしれない。
もう一度、思い知らせる必要がある。誰が一番強いのか、絶対的な強さとはどういったものなのか――。
さあ、2歳王者リオンディーズ様のご帰還だ。
『考察』
リオンディーズとサトノダイヤモンドは、どちらが強いのか。今春の3歳牡馬クラシックを占う上で、競馬ファンの間で最大の焦点となっているであろう疑問の答えの一端が、今週末の弥生賞(G2)で出るかもしれない。
朝日杯FS(G1)では、デイリー杯2歳S(G2)を3馬身以上突き放して圧勝したエアスピネルに完勝。阪神外回りとはいえ、上がり3ハロン33.3秒は断然の末脚で、直線だけで全馬をぶっこ抜く異次元のパフォーマンスを見せた。
エアスピネルとの差は3/4馬身だったものの、3着以下には4馬身以上の差をつけ、まさに格の違いを見せつけた格好。しかし、朝日杯で3着以下に沈んだ馬たちのその後はイモータルの共同通信杯(G3)2着、アドマイヤモラールの京成杯(G3)4着が目立つ程度で、あとは500万下さえまともに勝てていない状況だ。
したがって、朝日杯で3着以下につけた4馬身差は確かに決定的な差ではあるものの、その価値は決して高いとは言えない。
では朝日杯のレベル自体が低かったのかというと、そうでもない。同日に同舞台で行われた阪神9レースの元町S(古馬1600万下)のタイムが1:34.1で、朝日杯が1:34.4。2歳のこの時期に古馬1600万下と遜色ない時計は、さすがG1といえるもの。ちなみにダノンプラチナが勝った一昨年も、元町Sとはコンマ1秒しか差がなかった。
このことからも少なくともリオンディーズとエアスピネルの2頭だけは、例年の2歳トップクラスの水準は十分に満たしていると考えて良いだろう。
また、朝日杯でリオンディーズが最後方からの競馬になったのは、意図していたというよりは2000mの新馬戦を使った直後にマイルのG1に出走したためだと思われる。つまり、スタート直後のスピードについていけずに最後方になったということだ。
実際に新馬戦で同馬は中団から卒のないレースを進めており、同じ2000mで行われる今回の弥生賞でもある程度の位置で競馬をする可能性が高い。したがって、殿一気という朝日杯の豪快なイメージを持つのは控えた方が良さそうだ。
つまり、阪神外回りから直線の長くない中山に替わるからといって、本来の末脚が発揮できない可能性は低いということだ。
また、新馬戦のレベルはまず高いと見て間違いないだろう。2:02.2という時計が秀逸なのも然ることながら、2着のピースマインドが次走を6馬身差で圧勝しており、3着のアドマイヤダイオウも未勝利、500万下を連勝している。それらをあっさりと負かしたリオンディーズが、キャリア1戦にもかかわらず朝日杯で2番人気に推されたことからも、このレースのレベルが理解できるはずだ。