JRAの重要事! 夏の風物詩セレクトセールとサマーセール。生産界の代理戦争と取引馬の成績
夏競馬も残り2週となったが今週は北海道で生産界の一大イベントが行われた。「北海道市場サマーセール」である。夏になると競走馬の取引が活発になり、三大セールである「セレクトセール・セレクションセール・サマーセール」が行われる。
これらのセールは競走馬の生産牧場にとって重要な舞台で、「多くの馬をより高く売る」ことは彼らの生活に直結するため、生産者にとって大きな目標ともいえるのだ。
そもそも1998年にセレクトセールが誕生する前は、北海道市場が日本で最も歴史があり規模の大きな競走馬の競り市場であった。取引馬からはテイエムオペラオーやヒシミラクル、マチカネフクキタルやシンコウウインディなどが活躍。
しかしセレクトセールが誕生し、今まで競りで取引されなかったような良血馬が市場に出たことで、生産界と馬主と調教師の空気は一変。金さえ出せば、サンデーサイレンスの良血馬が誰でも買えるようになったのだ。そしてディープインパクトやキングカメハメハといったセレクトセール出身馬が、日本ダービーや海外のビッグレースを多く勝利したことで、セレクトセールが日本で最も注目を集める競りとなってしまった。
しかしサマーセールを実施する北海道市場からも、近年はモーリスやホッコータルマエ、さらにビッグアーサーなどがG1レースを勝利するなど活躍しており、巻き返しが見られる。特にモーリスのインパクトは大きい。同馬は2012年のサマーセールでわずか150万円で落札された馬。それが世界で活躍する名馬となったわけだから、決してサマーセールがセレクトセールに劣っているとは言えないだろう。
日本において、セレクトセールとセレクトセール以外の競りは大きな違いがある。セレクトセールは社台グループがバックアップしており、今年の上場馬455頭は社台グループや大手牧場の生産馬が中心。世界的良血馬やG1馬の弟や妹が多数並び、中央競馬のトップ馬主が争うように高額馬を落札している。
対して北海道市場が主催するサマーセールは、今年は1197頭とセレクトセールの倍以上の上場馬が集まったが、血統的にはディープインパクト産駒やロードカナロア産駒といった日本を代表する血統馬はゼロ。
さらにノーザンファームの生産馬もゼロで、日高地方の中小生産者の馬が多く集まっている。つまりこのセレクトセールとサマーセールは、社台グループと社台グループ以外の生産者との代理戦争の場とも言えるのだ。
今年行われたセレクトセールは二日間で史上最高の約205億円という驚異的な売り上げを記録した。売れたのはディープインパクト産駒、ロードカナロア産駒、キングカメハメハ産駒、そして外国から輸入されたフランケル産駒など、まさに日本のG1レースを席巻している名種牡馬ばかり。そして最高落札価格4億7000万円、平均落札価格約4931万円と尋常ではないレベル。455頭の上場で416頭が落札、落札率91.4%も異常な数字だ。
逆にサマーセールは上場頭数1197頭が圧巻。安価な種付け料のマイナー種牡馬の馬がズラリと揃っている。日本で生産されるサラブレッドが年間約7000頭、その17%近くがこのサマーセールでお披露目されるのだ。4日間の総落札額は45億7190万円で、上場馬が今年より多かった昨年の39億円より大幅にアップしたのは朗報といえるだろう。