【徹底考察】セントウルS(G2) ビッグアーサー「アーサー王にとって、実りの秋に向けた船出となるか。目指すは遥かなる『龍王』の後継」
【血統診断】
父サクラバクシンオーは日本競馬を代表するスプリンター。NHKマイルCを勝ったグランプリボスや、高松宮記念を制したショウナンカンプなど数多くのスピード馬を輩出している。ただ、そういったサクラバクシンオーを成功馬の多くは母系にしっかりとスタミナの裏付けがあり、スピード一辺倒になっていないことが重要だ。本馬ビッグアーサーも多分に漏れず、母方には欧州最高の成功を収めたサドラーズウェルズの血が入っている。
なお、母シヤボナのキングマンボ×サドラーズウェルズという配合には、凱旋門賞で2着したエルコンドルパサーがおり、スタミナと底力は十分。世界的名牝スペシャルのクロスが発生することも大きな特徴だ。こういったところが、非凡な能力を秘めるビッグアーサーの強さの裏付けとなっている。また、3代母Reloyはアメリカの芝G1を2勝し、フランスのヴェルメイユ賞でも2着。4代母Rescousseは仏オークス馬で凱旋門賞2着と母系は一本筋が通った名牝系だ。
ここまで11戦7勝、馬券圏外が1度だけというビッグアーサーだが、これが「長きに渡る王朝の始まり」という予感さえある血統的スケールだ。
≪結論≫
ここから長期政権を築きたいスプリント王の船出にとって、最大の懸念はやはり2戦2敗のダンスディレクターの存在だ。脚部不安のため春の高松宮記念には未出走だったが、ここで復帰している。改めて王者の貫禄を見せつけるためにも、負けられないところだ。
『考察』で開幕週の高速馬場はビッグアーサーにとって味方になると述べたが、あまり後ろで競馬をすれば逆に牙を剥かれることになる。そのためにも肝心なのはスタートで、唯一馬券圏外の5着に沈んだシルクロードSのような後方からの競馬だけは避けたいところ。手綱を執る福永祐一騎手は、自他ともに認めるスタートの上手な騎手。そういった意味で、このコンビは相乗効果を発揮しそうだ。
また、数少ない懸念の一つでもある初の58㎏に関しては、前走の馬体重520㎏という馬格のある馬なので大きな問題にはならないはずだ。休み明けとはいえ、ここで無様な競馬を見せるようだと今後に大きな暗雲が立ち込めることになる。
いずれにせよ、ビッグアーサーにとって次のスプリンターズSはもちろん、ここでも負けられないところ。「龍王」の異名を取った前スプリント王・ロードカナロアのような絶対的な王者になるためにも連勝を重ねて、年末には日本の短距離を代表して香港へ遠征したい。
(監修=下田照雄(栗東担当))