大混戦に「色めき立つオトコたち」高松宮記念(G1)は馬でなく「人間ドラマ」に注目か!?
大本命の香港馬エアロヴェロシティが疝痛のために回避、さらにはシルクロード(G3)を勝った本命候補ダンスディレクターまで歩様の乱れで回避と、今週になって一気にメンバーが弱体化した高松宮記念(G1)……。
その上、昨年のスプリント王のストレイトガールも不在ともなれば、尾張の電撃戦は「群雄割拠の様相」になったと述べて間違いないだろう。
混戦模様になったということ、つまりは「誰にでもチャンスがある」ということ。それも今週はドバイ遠征の影響でM・デムーロ騎手や武豊騎手などが不在なのだ。
とくれば、鬼の居ぬ間になんとやら……突然訪れた1着賞金9,800万円のボーナスチャンスに「色めき立つオトコたち」がいるのも当然か。そこで今回は、今週末の高松宮記念に向け、特に力が入っているであろう騎手たちを紹介したい。
まずは何といっても、1番人気が想定されるミッキーアイルの鞍上・松山弘平騎手だろう。2009年に新人王を獲るなど、これまで順調な成長を遂げてきた松山騎手。昨年はコーンベリーとのコンビで、ついにG1(JBCスプリント)制覇を成し遂げた。
しかし、大きな出世が期待できるJRAのG1はまだ未勝利。昨年も70勝したものの、リーディングベスト10入りの壁に阻まれ続けている。それも今年は9勝ながら2着24回と取りこぼしが目立っているだけに、このまま「中堅」に収まるのか、それとも「一流」としてさらに飛躍するのか、今回の高松宮記念が”きっかけ”になってもおかしくはない状況だ。
それだけに「すごいチャンス。全力を尽くす」と語った松山騎手からは、いつになく力が入っている様子が伝わってくる。主戦の浜中俊騎手の落馬負傷により巡ってきたチャンスを、阪急杯(G3)勝利という一発回答で掴んだ。さらなるビッグチャンスを掴めるかは、ここからの本人次第だろう。
“意気込み”という点では、ローレルベローチェの中井裕二騎手も負けてはいない。いや、中井騎手の場合、もはや「死活問題」と述べても過言ではないといった深刻な状況だ。
2012年のデビュー1年目23勝、2年目37勝と順調なスタートを切った中井騎手だったが、新人騎手の斤量減の恩恵がなくなると同時に成績が下降。一昨年が11勝、昨年は8勝。そして、今年が未だ1勝と、まさに騎手として「崖っぷち」の状況にある。
ただ、実はその貴重な1勝をプレゼントしてくれたのが相棒のローレルベローチェ。続くシルクロードS(G3)でも2着に奮闘し、中井騎手の生活という”現実”を支えるとともに、G1制覇という”夢”まで用意してくれた。
だからこそ「騎手人生の中でのチャンス」と中井騎手が意気込むのも当然だ。もしも、本人にとって初のG1となる高松宮記念制覇となれば、生活はもちろん騎手としての立場も一変する。そして、ローレルベローチェが決して可能性のない馬ではないだけに、中井騎手にとって、まさに人生を賭けた戦いになるだろう。