【徹底考察】スプリンターズS(G1) ビッグアーサー「進化した王者が見せたニュースタイル『変幻自在』の短距離王はスプリント界統一へ『逃げる』のか『控える』のか」
『考察』
「横綱相撲をしてきます」
前哨戦となったセントウルS(G2)。ビッグアーサーの主戦・福永祐一騎手は藤岡調教師にそうとだけ伝え、レースに挑んだという。
開幕週の1枠1番という絶好枠から好スタートを切ったビッグアーサーは、そのまま敢然とハナを主張。これまでのキャリアで逃げたことは一度もなかったが、出だしの1ハロンのタイムは12.3秒。
昨年、アクティブミノルが逃げ切った際の最初の1ハロンが11.9秒、一昨年が11.8秒。この事実からも、12.3秒でハナを奪った福永騎手の好判断が光る。開幕週の馬場、ビッグアーサーの能力を考慮すれば、そのまま圧勝まである……そう述べられる程、決定的な判断だった。
だが、結果的に余裕があったとはいえ2着ネロと1馬身差の決着となったのは、その後10.2‐10.6と急激な加速を強いられ、前半の600mが33.1秒になったからだ。
その流れを産み起こしたのは、スノードラゴンに騎乗していた川田将雅騎手。楽逃げを計ったビッグアーサーを即座にチェックしにいった判断の素早さは、さすが今年のダービージョッキーである。
一時は、先頭を走っていたビッグアーサーを交わして、王者に再加速を強いらせた。結果、次の1ハロンも10.8秒と決して楽な逃げは打たせていない。
だが、それでも止まらない絶対能力の高さが、今のビッグアーサーには備わっているようだ。
最後の1ハロンこそ12.5秒と時計が掛かったが、これは鞍上の福永騎手には最後まで後続を気にする余裕があり、ビッグアーサーにも十分な余力が感じ取れたままのゴールだったためだ。
結果、内容、馬の強さ。どれを取ってもほぼ完璧な前哨戦だったのではないだろうか。