JRA大阪杯(G1)福永祐一とワグネリアンの真実。昨夏ブラストワンピースに「勝利を確信するくらいの手応え」から、まさかのアクシデント
「ぜひもう一度……いえ、もう一度と言わず、もっとG1の大きなタイトルを獲っていきたいという強い気持ちがあります」
5日に阪神競馬場で行われる大阪杯(G1)へ、共同会見の席で人一倍強い思いを抱いている騎手がいる。2018年のダービー馬ワグネリアン(牡5歳、栗東・友道康夫厩舎)の主戦・福永祐一だ。
「出走するレースを全部勝つつもりでいく――」
昨年の天皇賞・秋(G1)直前、アーモンドアイらG1馬9頭の超豪華メンバーを前に福永騎手は、そう言い切った。それは何もワグネリアンが、自身初の日本ダービー(G1)をプレゼントしてくれた存在だからというだけではない。
それ以上に、相棒のパフォーマンスに対する“確信”があったからだ。
天皇賞・秋のステップレースとして使われた昨夏の札幌記念(G2)。舞台は大阪杯と同じ、芝2000mだ。ブラストワンピースやフィエールマンら同世代のG1馬が顔を揃えていたが、陣営には大きな自信があった。体質に弱いところがあったワグネリアンがついに本格化し、追い切りでも抜群の動きを見せていたからだ。
しかし、結果は4着。課題のスタートが決まり、福永騎手は「立ち回りの上手さも、今までにない感じ」「3コーナーでは、勝利を確信するくらいの手応えだった」と振り返った。だが、その直後に両前脚を落鉄……“裸足”になったダービー馬は、本来の力を発揮できないまま敗れた。
「結果的には内々を上手く回ったブラストワンピースと、好位から粘ったサングレーザーが1、2着と前からスムーズなレースをした馬に有利な展開でした。
ワグネリアンも福永騎手の狙い通り、同じようなポジションにいましたし、最後の直線を迎えた際には『圧勝するかも』と思えるほどの手応えだったんですが……。ワグネリアン陣営も『まともなら勝ち負けだった』と、相当悔しがっているのが印象的でした」(競馬記者)
「この馬は課題がスタートなんですよね。出遅れるわけではないですけど、好スタートを切る確率が低い。(好スタートだったのは)札幌記念の時くらいだったので」
共同会見の席でそう語った福永騎手も当然、昨夏の札幌記念の悔しさは記憶にあるはずだ。おそらく札幌記念で見せた「好位追走」こそ、ワグネリアンと福永騎手が目指す「本当の競馬」なのだろう。それはダービーを勝った時の競馬であり、同時に阪神の内回りコースで行われる大阪杯の“勝ちパターン”でもある。
「今年に関しても、いいスタートを切れるかどうか。それが上手く流れに乗れるかに繋がってくる。とにかくいいスタートを決めたい」
昨年は3着に敗れたが長期休養明けで、陣営は惨敗まで覚悟していたという。しかし、今年は友道康夫調教師が「ここを目標にしっかりとやってきました」と言えば、スタッフも「ビシビシ調教して、去年の札幌記念に匹敵するぐらいの抜群の状態」と胸を張る。
リベンジの舞台は整った。ワグネリアンと福永騎手が完成された「本当の競馬」で2つ目のビッグタイトルをもぎ取る。