JRA天皇賞・春「大変身」スティッフェリオあわやの大金星! 「抜け出した時の手応えはあったけど……」絶対王者フィエールマンを追い詰めた舞台裏
大一番で、見事な“変身”を遂げた。
3日、京都競馬場で行われた天皇賞・春(G1)は、1番人気のフィエールマンが優勝。ただ、連覇の懸かった「長距離王」に最後まで食い下がったのは、伏兵スティッフェリオ(牡6歳、栗東・音無秀孝厩舎)だった。
「頑張ってくれました。4コーナーで抜け出した時も手応えはあったけど、ラスト100m で息が上がってしまいました」
大本命撃破まであと一歩……悔しそうにそう振り返ったのは鞍上の北村友一騎手だ。
14頭中11番人気という低評価だったスティッフェリオ。しかし、それもそのはず。昨秋のオールカマー(G2)で3つ目の重賞タイトルを手にしてからは天皇賞・秋(G1)で12着、有馬記念(G1)で13着と「G1の壁」に跳ね返されていたからだ。
復活への転機が訪れたのは、今年1月のAJCC(G2)だった。G1で大敗を繰り返したスティッフェリオだったが、昨秋のオールカマーと同じ中山芝2200mということもあり、3番人気と再び期待を集めた。
レースでは、オールカマーと同じように果敢にハナに立つ競馬。しかし、最後の直線で失速して8着に惨敗した。勝ちパターンに持ち込んでの厳しい結果に、音無秀孝調教師をはじめとする陣営はスティッフェリオの“変身”を決意。その効果が表れたのは、前走の日経賞(G2)だった。
「前走は乗り方を変えてもらって、我慢する競馬をしてみたけど、それがいい方向に出たね」
そう音無調教師が振り返っている通り、日経賞では中団やや前からの競馬。内々で脚を溜めるレースを試みると、早めに先頭をとらえに行き、3着に粘り込んだ。
陣営はスティッフェリオに「我慢」を覚えさせた、この走りを高く評価。天皇賞・春の直前にも「今回を見据える意味で悪くない競馬」と話し、「内でジッと溜める形で、どこまでやれるか……」と本番を見据えていた。
「まさに陣営が狙っていた通りのレースをしましたね。スタートが決まったため、前走(日経賞)よりも前目の位置取りになりましたが、スタート直後もダンビュライトとのハナ争いには参加せず。
1週目のスタンド前で武豊騎手とキセキがハナを奪った際にも北村友騎手は焦らず、折り合いに専念していたのが印象的でした」(競馬記者)
その我慢が功を奏したのが、最後の直線だ。前を行っていたキセキやダンビュライトの脚が鈍ったところで、併せ馬を行いながら1頭ずつ交わして先頭に躍り出たスティッフェリオ。残り200mで先頭に立った瞬間は悲願のG1制覇が垣間見えたが、最後の最後で“絶対王者”フィエールマンにねじ伏せられた格好だ。
「無理せず、好位につけられたことが、今日の頑張りにつながったんじゃないかと思います」
レース後、そう振り返った北村友騎手。フィエールマンとはハナ差の大接戦だったが「ゴールに入った時は負けたと思いました」と、そこには間近にいた騎手にしかわからない僅かな差があったようだ。