JRA武豊「ムチ?その辺に忘れました」スペシャルウィークで悲願の初勝利! 無我夢中で追った98年ダービー、若き福永祐一はキングヘイローまさかの逃げに顔面蒼白
3歳の頂点を決める競馬の祭典・日本ダービー(G1)、今年もまた競馬が最も盛り上がりを見せる時期といっても過言ではないダービーウィークがやってきた。これまで悲喜交々の多くのドラマを演出してきた大一番に関係者もファンも気が気でないだろう。
今年は無敗の皐月賞馬コントレイルが、一足先に牝馬の無敗2冠を達成したデアリングタクトに続けるかに大きな注目を集めている。2着に敗れた皐月賞のリベンジを誓うサリオス、皐月賞では力を発揮できず5着に敗れたサトノフラッグはディープインパクト記念(G2)を勝利に導いた武豊騎手との再タッグで巻き返しを図る。
史上最多のダービー5勝を誇る武豊騎手にかかる期待は大きくなる一方だ。
そんな競馬界のレジェンド・武豊騎手にとってもダービーは非常に思い入れの強いレースのひとつだろう。デビューから様々な記録を更新してきた天才もダービーだけは勝てなかった。
初騎乗となった88年は16番人気コスモアンバーで最下位に終わるほろ苦いデビュー。以降もチャンスのある馬に騎乗するも勝利には手が届かなかった。はじめて1番人気に騎乗し、ようやく最大のチャンスが訪れたかに思われた96年のダンスインザダークでは、和製ラムタラといわれたフサイチコンコルドの激走の前にクビ差2着と涙をのんだ。
「武豊はダービーだけは勝てない」というジンクスは競馬界の七不思議のひとつとまで囁かれるようになった。
ところが、「その日」は思いのほか早くにやってきた。
98年にふたたび1番人気でダービーに挑戦することになった。タッグを組んだのは2018年4月にこの世を去った際に武豊騎手も「ダービージョッキーにしてくれた馬なので、とても特別な一頭です。一生忘れられない馬です」とその死を惜しんだスペシャルウィークである。
この年の皐月賞(G1)は単勝1.8倍の支持を受けたスペシャルウィークが3着に敗れ、勝利したのは横山典弘騎手の2番人気セイウンスカイだった。福永祐一騎手の3番人気キングヘイローが2着に入り、弥生賞(G2)の3着以内が入れ替わった結果となった。
だが、この敗戦は仮柵を外した最内のグリーンベルトを味方に逃げ切ったセイウンスカイに対し、8枠18番の大外を引いたスペシャルウィークは、外を回らざるを得ない不利も大きかった。
そして迎えた大一番のダービーでも、スペシャルウィークの力を信じるファンは引き続き1番人気に支持した。
レースは前走の皐月賞を2番手から押し切った横山典騎手のセイウンスカイが先手を主張するのではないかと考えられていたが、スタートしてすぐに多くのファンが目を疑う光景が繰り広げられた。