JRAグランアレグリア「弟」は幻のダービー馬候補!? 安田記念(G1)アーモンドアイ撃破で惜しまれる超期待馬の存在
7日、東京競馬場で行われた安田記念(G1)を勝利したグランアレグリア(牝4、美浦・藤沢和雄厩舎)は「8冠」を目論んだアーモンドアイの野望を阻止した。
アーモンドアイがスタートで出遅れる誤算があったとはいえ、真っ向勝負で最強女王を打ち負かした。完勝ともいえる2馬身1/2の着差からも、「グランアレグリア時代」の到来を予感させるに十分な走りを披露したといえるだろう。
昨年のNHKマイルC(G1)では単勝オッズ1.5倍の圧倒的1番人気に支持されながらも、直線では伸びを欠き、4位入線5位降着と人気を裏切ったが、古馬となって再び臨んだ東京芝1600mで外から力強く伸びた。2歳時の朝日杯FS(G1)や、昨年のNHKマイルCで見せた脆さを完全に払拭した走りには精神面での大きな成長が窺えた。
グランアレグリアは父ディープインパクト、母タピッツフライの超良血だ。母はアメリカで芝1800mのG1を2勝した実績馬であり、引退後に吉田勝己が落札し、2012年からノーザンファームで繁殖入りした。そして日本で生まれた初仔がグランアレグリアだった。
しかし、残念なことにタピッツフライは2番仔のブルトガングを残したまま、2018年にこの世を去ってしまった。
桜花賞を圧勝した姉グランアレグリア同様、高い評価を受けていた全弟ブルトガングは、6月東京のデビュー戦で単勝オッズ1.5倍の圧倒的な支持を受ける。そして期待に違わぬ走りで、2着馬に4馬身差をつける大楽勝を飾ったのである。
手綱を任されたC.ルメール騎手はレース後に「能力はありそうです」と素質を評価し、管理していた手塚貴久調教師も「大きいところを狙っていきたいです」とコメントしたようにクラシックでの活躍を嘱望され、評価はうなぎ上りとなった。
だが、6月22日の新馬戦を勝って間もない7月9日の朝、悲劇は突然訪れた。
放牧先の福島・ノーザンファーム天栄で安楽死となったことが同馬を所有するサンデーサラブレッドクラブのホームページで発表されたのである。死因については頸椎狭窄による腰萎(ようい)の可能性が高いといわれている。
「その後、ルメール騎手は同時期に東京でデビューしたワーケアで今年の日本ダービーに騎乗しましたが、ブルトガングもクラシック候補の期待が大きかった逸材でした。デビュー戦もワーケアと同等以上の内容といえるほどでしたから残念です。ブルトガングが無事であれば、クラシックにルメール騎手とのコンビで出走していた可能性もありました。
今年はコントレイルが無敗でクラシック2冠を達成しましたが、もしもブルトガングが健在ならば、サリオス以上の強敵となっていた可能性もあったかもしれませんね。姉のグランアレグリアがこれだけの活躍を見せただけに、志半ばでの早世がますます惜しまれます」(競馬記者)
母タピッツフライも既に死亡しており、兄弟の誕生はなくなってしまったが、希望が残ったのは姉グランアレグリアが牝馬だったことである。
現在が競走馬として最高潮にも思える同馬だが、いずれは引退して繁殖牝馬となる第2の馬生が待っているだろう。
グランアレグリアには亡き母と弟の夢の続きを紡いでもらいたい。