JRA 実はD.レーンがエプソムC(G3)大波乱の陰の立役者!? 「予行演習」万全も「本番」でまさかの不発
14日、東京競馬場で行われたエプソムC(G3)は内田博幸騎手の9番人気ダイワキャグニーが、逃げ粘るトーラスジェミニを交わし優勝。内田騎手はクレッシェンドラヴで制した昨年11月の福島記念(G3)以来、約7か月ぶりの重賞勝利を飾った。
2着に5番人気ソーグリッタリング、3着に18頭立ての最低人気となるトーラスジェミニがしぶとく粘り込み、3連複は73万円、3連単にいたっては421万円の大波乱となった。
不良馬場ではじまった日曜の東京競馬場の芝コースは重の巧拙が明暗を分かつとともに、東京の最後の長い直線で「通ったコース」も結果に大きく影響した一日でもあった。
そんななか、特殊な馬場状態を逆手に取った好騎乗を見せていたのが、D.レーン騎手だった。
8R芝1600m(1勝クラス)で1番人気ジーナスイートの手綱を取ったレーン騎手。14頭立ての最低人気モデレイトで逃げ切るという奇襲を決めた野中悠太郎騎手の判断も見事だったが、内からスルスルと抜け出して来たのがレーン騎手のジーナスイートだった。
各騎手が雨で傷んだ内側を避けて外に進路を取ることが多かったが、意外にも内を通ってもいい伸びを見せた。内枠を引いていた関係もあっただろうが、レーン騎手は「内も悪くないのではないか」という「疑念」が浮かんだのではないか。
「疑念」から「確信」に変わったのが10Rの芦ノ湖特別(2勝クラス)で騎乗したサトノフォースだろう。直線で各馬が外を回す中、ただ1頭「イン突き」を決行した結果、がら空きとなった内をスルスルと抜け出して、前を行く馬を差し切った。
1度ならず2度までも、馬場が悪いイメージに反して内が伸びる手応えを掴んでいたレーン騎手は、“本番”のエプソムCで1番人気サトノアーサーに騎乗した。2レース続けて芝のレースでイン突きが成功していたことに加え、2枠4番という最高の枠を引いていたサトノアーサー。レーン騎手はおそらく「2匹目のどじょう」ならぬ「3匹目のどじょう」を狙っていただろう。
だが、「本番」では思いもよらぬ大誤算が待ち受けていた。
直線に入っても先行勢が外に進路を取ることなく、内ピッタリに張り付いてしまったのである。そのため、がら空きのインコースから他馬を出し抜いて走れていたグリーンベルトは消滅し、抜け道がなくなってしまった。
サトノアーサーは直線で何とか追い上げたものの、6着までが精いっぱいだった。
「2レース連続でイン突きが見事にハマっていたのを見て、レーン騎手の馬場読みが成功しているなという印象はありました。ですが、これは我々がそうだったように、他の騎手も当然意識したことだったんでしょうね。
もう少しあからさまでなければよかったかもしれませんが、本番前に『カラクリ』が分かってしまいました。それまでのレースでは内が大きく空いていたにもかかわらず、エプソムCではみんな内を狙って密集していたのは好対照でした」(競馬記者)
振り返ってみると、勝ったダイワキャグニーは18年のエプソムCを1番人気で14着に惨敗し、そのときの勝ち馬がサトノアーサーだった。あれから2年後の同じレースを、今度は1番人気のサトノアーサーが敗れ、ダイワキャグニーが勝利するという逆転劇となった。
騎手の駆け引きを含め、2年前の敗者の勝者へのリベンジと、改めて競馬の奥深さを感じさせられた今年のエプソムCだったといえそうだ。