JRA武豊キセキも危機一髪!? 宝塚記念(G1)劇的復活の“裏”で「アノ馬」にオーナーが下した苦渋の決断……
クロノジェネシスが圧勝を見せたグランプリ・宝塚記念(G1)の余韻が残る中央競馬だが、2着に入ったキセキの鮮やかな復活劇も大きな注目を集めたといえるだろう。
同馬は単勝オッズ1.6倍の圧倒的1番人気に支持された今年の阪神大賞典(G2)を、ゲートから1秒以上も出ないという大出遅れを犯し、これにより「発走調教再審査」の処分が下された。管理する角居勝彦調教師は今後についても「白紙です」と話したほど深刻な状況だった。
陣営は復活への起爆剤として、川田将雅騎手から武豊騎手への乗り替わりを決断。そして、武豊騎手を背にゲート再審査に合格。天皇賞・春(G1)への参戦が正式に決まった。初コンビとなった同レースでキセキは好スタートを決め、結果こそ6着に終わったとはいえ、次走の宝塚記念(G1)に向けての前進を感じられるレース内容を見せた。
武豊騎手とのコンビ2戦目となった宝塚記念では、好スタートとはいえないまでもしっかりとゲートから飛び出した。我慢の利かなかった天皇賞・春とは一転して後方でピタリと折り合うと、勝負どころとなった3コーナー過ぎから一気に追い上げる。クロノジェネシスに離されたとはいえ、完全復活に弾みをつける復活走を披露した。
宝塚記念のキセキが懸念されたスタートを克服した一方で、前日の土曜東京9R清里特別(2勝クラス)では関係者をざわつかせる出来事があった。ニシノジャガーズ(騙5、美浦・萱野浩二厩舎)が、ゲートが開いても一向に出る素振りを見せないまま、競走除外となってしまったのである。この件について、過去の発進不良履歴を考慮された結果、6月28日から裁定委員会の議定があるまでの間、出走停止の処分が下された。
前走の大島特別でも同じく大きな出遅れを犯して出走停止処分を受けていただけに、同馬を所有している西山茂行オーナーにとってもショッキングな結果だったようだ。詳細についてはブログ内の記事をご覧いただきたいが、記事内で萱野調教師、岩部騎手、西山牧場スタッフと話し合った結果、登録抹消して乗馬にすると発表された。
西山オーナーも「能力のある馬で残念ですが、ゲートが出ないので仕方ありません」と能力を惜しみつつ、「何より馬券を買ってくれた方々に申し訳なく。本当にすみませんでした」とニシノジャガーズの馬券を購入したファンに向けてメッセージを送った。
印象的だったのは、「動物と話ができる人ハイジに頼んだらどうでしょうか?」という提案に対し、「ここまでさんざん縛りつけたり、叩いたりして、その上なす術なしと去勢までしたニシノジャガーズが、人間に言うことを想像したら、聞ける言葉は想像がつきます」と触れていた部分だ。
サラブレッドの生産に携わっている西山オーナーの言葉だけに、考えさせられる内容である。我々も含めて一般のファンは競馬の華やかな部分ばかりに目を奪われがちだが、その裏で関係者の努力やサラブレッドへの想いにまでは気付かないことも多い。
馬券の的中に一喜一憂するのみではなく、こうした関係者のお陰で競馬を楽しめていることにも感謝の気持ちを忘れずにいたいものである。