今年の桜花賞を「三強対決」だけと思うなかれ!名手の思わぬ機転で「変身」を遂げた馬による大反撃も……
今週末に迫った桜花賞(G1)だが、「逃げるメジャーエンブレムに、直線勝負に懸けるシンハライトとジュエラーがどこまで追いつけるか」という構図が大方の下馬評になっている。
しかし、大衆が予想した通りにレースが動くのなら、馬券が荒れることはそうそうないだろうし、実際には「誰もが思いつかないような展開になるのが日常茶飯事」なのが競馬ではないだろうか。
昨年も、これまで中団から末脚勝負に徹してきたレッツゴードンキが、前哨戦のチューリップ賞(G3)でいきなり逃げを打ったものの3着に敗退した経緯があった。だからこそ、本番の桜花賞で再びハナを奪いにいったレッツゴードンキの鞍上・岩田康誠の騎乗に、本馬の馬券を買っていた誰もが「何をやってんだ、岩田!」と一度は目を覆ったはずだ。
しかし、レースは前半の1000mが61.4秒という極端なスローペースだということを知ると、どよめきと共に「ナイス、岩田!そのまま!」と心の中でほくそ笑んだに違いなかろうか。
レースはそのまま、まんまと後続全馬を”ハメた” 岩田騎手のレッツゴードンキが4馬身差で圧勝。まさか、改修して直線が長くなった阪神コースで「魔の桜花賞ペース」を目の当たりにするとは思ってもみなかった。
競馬には古くから「レースは生き物」という格言があるだけに、レースがまったくの想定通りになることなど、逆に珍しいのではないだろうか。
ましてや、参加する騎手の誰もが「野望」を持って挑むG1レースで、走るのはキャリアが浅く戦法も手探りの馬が多い桜花賞。
歴史を振り返っても、競馬ファンが毎回名馬の出現を期待して力通りの決着を望む一方、勝った馬が本当に名馬なのかどうかは、もっと後にならないとわからないことの方が意外に多いのではないだろうか。
過去にも「レースは生き物だ」と痛感させられるレースは多々あったが、近年で一際目立つのは怪物ディープインパクトが、国内でまさかの敗戦を喫した2005年の有馬記念(G1)だろう。
主役となったハーツクライは、それまで自慢の末脚を武器に活躍していたが、日本ダービーやジャパンCで2着するなど、G1にはあと一歩届かなかった。
しかし、この有馬記念ではC・ルメール騎手の機転で、これまでのイメージを覆す先行馬に変身。3番手からの積極策でディープインパクトを撃破し初G1を手にしただけでなく、翌年にはドバイシーマクラシック(G1)も制して一躍、世界有数の実力馬にのし上がった。
これも桜花賞のレッツゴードンキと同じく、末脚勝負に徹していた馬が突然前で競馬をして激走したケースだ。有馬記念でハーツクライの馬券を勝っていたファンは道中、気が気ではなかっただろう。
もちろん「逆のパターン」も存在する。