JRA朝日杯FS(G1)1番人気レッドベルオーブ痛恨3着……福永祐一「選択ミスが響きました」追い掛けてしまった「コントレイルの幻想」とは
20日、阪神競馬場で行われた2歳王者決定戦・朝日杯フューチュリティS(G1)は、7番人気の伏兵グレナディアガーズがレコードタイムで優勝。前走の未勝利勝ちから、一気に世代の頂点へ上り詰めた。
「性格が難しい馬なので、気分を害さないように走ろうとイメージしていました。とてもリズムよく我慢してくれて、いい内容で走ってくれていたと思います」
レース後、鞍上の川田将雅騎手がそう語った通り、道中の折り合いはピタリ。モントライゼが大逃げを打つ難しい流れになったが、まさに人馬一体といえる会心の騎乗だ。2週前のチャンピンオンズC(G1)のクリソベリルで、単勝1.4倍を裏切ってしまった川田騎手にとっては汚名返上の勝利となった。
その一方、人馬一体になれなかったのが、1番人気ながら3着に敗れてしまったレッドベルオーブ(牡2歳、栗東・藤原英昭厩舎)の福永祐一騎手だ。
16頭立てで行われた芝1600mのレース。まずまずのスタートを決めた福永騎手は控えて中団からの競馬を選択。しかし、ここでレッドベルオーブが前に行きたがったため、激しく頭を上げる事態に……。
結局、中団から外を追い上げたものの、上位2頭には完敗と言える3着だった。
「最大の敗因は位置取りの差でしょうね。馬の行く気に任せて前に行った川田のグレナディアガーズに対して、福永はレッドベルオーブと“喧嘩”してまで中団待機を選択しました。
勝ったグレナディアガーズは2走前にレッドベルオーブに完敗している馬ですし、決してレッドベルオーブの能力が足りなかったとは思えません。結果的には、道中の位置取りが両者の明暗を分けたのではないでしょうか」(競馬記者)
この敗戦には管理する藤原英昭調教師も、東京サラブレッドクラブの公式HPを通じて「折り合いを気にして、位置取りが後ろになりすぎましたね」と敗因を分析。
「展開などちょっとの差で逆転できると思いますし、決して悲観する内容ではなかった」と敗戦を受け止めている。
「今年の三冠馬コントレイルもそうですが、福永騎手は常に先を見据えて馬に競馬を教えながらレースをする傾向があります。
戦前に藤原調教師も『勝ってくれるのが一番ですが、来春にも大きいところが控えているので、そこに向けての訓練も兼ねた、内容のあるいいレースをして欲しい』と話していた通り、今回も福永騎手はレッドベルオーブの折り合いをつけることを重視していたんでしょうね。
朝日杯FSは2歳王者を決めるG1ですが、もっと先の大きな目標を持つレッドベルオーブ陣営にとっては、あくまで成長を重ねるレースの一つという位置づけだったのかもしれません」(別の記者)
レース後、福永騎手は「馬は落ち着いていて雰囲気は良かったです。3コーナーで勝ち馬の後ろが開いていて、そこを取ることもできたが、最後までそこの選択ミスが響きました」とコメント。敗因は中団につけたことそのものではなく、早めに内を突いて上がって行かなかったことと主張している。
競馬において「先を見据えること」と「目の前の勝利を掴むこと」の両立は極めて難しく、そのバランスを差配する騎手にとっても大きなテーマの1つと言えるだろう。
だからこそ無敗のまま三冠を成し遂げたコントレイルは偉大といえるが、主戦の福永騎手はその“幻想”を追ってしまったのかもしれない。