チャンピオンズカップの記憶～最高に輝いた2011年、藤田伸二騎手最後の相棒トランセンド～
編集部
しかしこの連覇で燃え尽きたのか、翌年のトランセンドはフェブラリーステークス、ドバイワールドカップ、JBCクラシック、ジャパンカップダートですべて敗退。持ち味の逃げを見せることができず限界説も流れた。その後陣営が協議し引退が決定、種牡馬として北海道へ旅立ったのだった。
伸び悩むトランセンドに逃げを叩き込み、一気に素質を開花させたのは紛れもなく藤田伸二騎手であった。
「本来は走ることが好きじゃない馬なんですよ」
と藤田騎手はトランセンドのことを評していたが、それでもこれほどの結果を残すことができたのは確かな技術と深い信頼関係があったからであろう。
かつて年間騎乗数900回以上、年間100勝は当たり前という藤田騎手だったが、晩年はその自由奔放な発言と考え方から騎乗が激減。信頼していた関東ベテラン記者の訃報、本人が語っていたようにエージェントシステムの問題などが重なり年間騎乗数は400回台まで落ち込み、騎乗馬の質も低下した。そしてトランセンドと制した2011年のジャパンカップダートを最後に重賞レースの勝利はなく、華やかな舞台から消え、引退を決断してしまった。
トランセンド、そして藤田伸二騎手が最も輝いた2011年。あれから5年が過ぎ今年はトランセンドの意志を継ぐアウォーディー、ラニ、ブライトラインの3頭が出走する。この3頭はトランセンドを生産、所有したノースヒルズの生産馬。中でもアウォーディーとラニは来年のドバイワールドカップへ挑戦するプランがあるという。トランセンドがなし得なかった「夢」は確実に引き継がれている。