JRAグランアレグリア「政権交代」告げたサプライズ! 女王アーモンドアイ消せない傷痕…… 「真の最強馬」が来年の競馬界を統一か【安田記念2020】
単勝1.3倍に支持された圧倒的1番人気の完敗に誰もが目を疑った。
6月7日、東京競馬場で行われた春のマイル王決定戦・安田記念(G1)は、池添謙一騎手の3番人気グランアレグリア(牝4、美浦・藤沢和雄厩舎)の圧勝で幕を閉じた。
牝馬限定G1のヴィクトリアマイルに参戦した最強馬は、涼しい顔でノーステッキ4馬身差の独走劇。かつて多くの名馬達が跳ね返されて来た7冠の壁。だが、芝G1最多勝を目論む女王アーモンドアイにとっては、寄り道替わりに立ち寄った給水所のようなボーナスレースだったのかもしれない。
戦前からすでに当確ムードに満ち溢れ、メディアや専門紙でさえ1強を後押しする声で埋め尽くされていた。単勝オッズも1.4倍だった牝馬相手の前走から、1.3倍とさらに支持を集めていた。
それもそのはず、対戦相手がほぼこれまで戦ってきたメンバー。未対戦だったとはいえ、グランアレグリアは前走の高松宮記念(G1)を2着(3位入線繰上り)に敗れていた馬だった。
その背には主戦のC.ルメール騎手ではなく、代打の池添謙一騎手の姿があった。両馬に跨がって来たルメール騎手がアーモンドアイに騎乗をすることから、競馬ファンがアーモンドアイの勝利を確信するには十分な根拠となったのかもしれない。
14頭立てのレースは、ダノンスマッシュが先手を主張して先頭。ミスターメロディが2番手、アドマイヤマーズが3番手に続いて前半3ハロンは34秒2の平均的な流れ。スタートのよくなかったアーモンドアイは後手に回ったものの、ルメール騎手の素早いリカバリーで中団の8番手まで取りついた。
絶対の自信を持つ女王にとって不測の事態があるとすれば、1年前の同レースで外から内へ切れ込んだロジクライから受けた不利のようなアクシデントだ。とにかく無事に回って来さえすれば、自ずと結果はついてくる。ルメール騎手も抜群の手応えで伸び伸びと走るパートナーへの信頼は揺るがなかっただろう。
最後の直線に入りと、前を行くケイアイノーテックの外へとアーモンドアイを導いた。行く手を遮るものは何もない。後は”いつも通り”に、末脚を炸裂させて前の馬を交わすだけの作業をこなすのみだった。
外から1頭、また1頭とライバルを交わすアーモンドアイ。前年に不覚を取った相手であるインディチャンプを捉えたまでは問題なかったが、今年はさらに前方でゴール板を駆け抜けるグランアレグリアの姿があった。
同馬は3番人気と決して人気薄の激走とはいえないものの、あのアーモンドアイ相手に2馬身半という決定的な差をつけて完勝したことに、競馬ファンの多くが狼狽するよりなかった。
スタートの不利があったとはいえ、それは他馬から受けたものではない。前年の春秋マイル王であるインディチャンプを破ったことからも、能力の衰えとは言い難く。そのあまりにも鮮やか過ぎる政権交代劇に、「完敗」「力負け」の文字が浮かび上がる。
歓喜に沸くグランアレグリア陣営とは対照的に、アーモンドアイ陣営のショックはあまりにも大きかった。