【徹底考察スペシャル】香港スプリント(G1) ビッグアーサー「『最低の騎乗』といわれる前走の本当の敗因とは?世界のR.ムーア騎手を背に言い訳の効かない一戦に挑む」
【血統診断】
父サクラバクシンオーは日本競馬を代表するスプリンター。NHKマイルCを勝ったグランプリボスや、高松宮記念を制したショウナンカンプなど数多くのスピード馬を輩出している。ただ、そういったサクラバクシンオーを成功馬の多くは母系にしっかりとスタミナの裏付けがあり、配合がスピード一辺倒になっていないことが重要だ。本馬ビッグアーサーも多分に漏れず、母方には欧州最高の成功を収めたサドラーズウェルズの血が入っている。
なお、母シヤボナのキングマンボ×サドラーズウェルズという配合には、凱旋門賞で2着したエルコンドルパサーがおり、スタミナと底力は十分。世界的名牝スペシャルのクロスが発生することも大きな特徴だ。こういったところが、非凡な能力を秘めるビッグアーサーの強さの裏付けとなっている。
また、3代母Reloyはアメリカの芝G1を2勝し、フランスのヴェルメイユ賞でも2着。4代母Rescousseは仏オークス馬で凱旋門賞2着と母系は一本筋が通った名牝系だ。
前走で大きく後退した感のある本馬だが、あくまで力負けではない。血統的にはスプリント王として長期政権を握るに相応しいスケールを感じる。今回は世界屈指のハイレベルな一戦となるが、それを制してもおかしくないだけの潜在能力はあるはずだ。
≪結論≫
キャリア最大で屈辱ともいえる敗戦となった前走のスプリンターズS。敗因は『考察』で述べた通り。最後の直線で進路が見つけられなかったこと、そして最後に躓いたことが”トドメ”となった。
だが、それはあくまで「表向き」の敗因だ。
同じ馬が何度も走り続ける競馬という競技は、時に1つのレースを「点」として捉えるのではなく、前走などレースに至るまでを「線」として考察する必要がある。
スプリンターズSのゲートが開いた次の瞬間、全馬揃ったスタートが切られる中で最後方にいたのは武豊騎乗のブランボヌールだった。前哨戦のキーンランドSを好位から押し切ったこの馬は、決して追い込み馬ではない。一体何があったのか。
実は1枠2番からスタートしたブランボヌールはゲートが開いた直後、隣にいたビッグアーサーからタックルを受けて後方に追いやられている。前者が446㎏の3歳牝馬で、後者が520㎏の牡馬。競り合った時の勝敗は見えていた。
親が同時期に活躍したトップ騎手同士だった福永騎手は、幼少の頃から武豊騎手と親交があり、現在も兄のように慕っていることは有名だ。あくまで「勝負の世界」の中ながら、そんな存在を強引に”蹴落として”まで福永騎手がやりたかったことは、0.1秒でも早く2枠4番の「ソルヴェイグの後ろ」に入りたかったからだろう。
その背景には、当然騎乗馬が単勝1.8倍の大本命だったという事実もある。だが、それ以上に当日のビッグアーサーの状態が、レース前から発汗が目立つなど明らかにイレ込んでおり、極めて危ういムードだったことが大きい。
無論、事前調整の問題もあったかもしれないが、それ以上に問題だったのはビッグアーサーのこれまでの「臨戦過程」にあったように思える。事実、5歳馬ながら今回が中山初見参だった本馬。それも関東圏への遠征自体が、2014年4月に福島で迎えたデビュー戦以来となる。それも、2年前は福島に滞在してレースを迎えたが、直前輸送という意味では今回が実質初めての経験だったはずだ。
PICK UP
Ranking
23:30更新- 武豊「クラシック好走」の実力牝馬と新コンビ結成! 最多勝利新人騎手にも輝いた「かつてのホープ」が2度目の降板に
- G2降格ひとまず回避も「微妙な立ち位置」に変わりなし?キングカメハメハ、ディープスカイがダービー馬も…「役割を終えた感」を拭えないNHKマイルC
- 「プチ炎上」斎藤新の裏で踏んだり蹴ったりの苦労…三浦皇成を襲ったすれ違いの春、「C.ルメールの復帰」も関東のベテランにダメージ直撃か
- 福永祐一厩舎「初G1」はこの大物!? リバティアイランド、フォーエバーヤングの妹…来年のクラシックもキズナ産駒は大注目!
- 【日本ダービー】「過去20年連対ゼロ」の苦戦でも今年はG1級!? C.ルメールも認めた実力馬がジャスティンミラノ打倒に虎視眈々
- 【ヴィクトリアマイル(G1)予想】ナミュールから6点で万馬券狙い! マスクトディーヴァは持ちタイムに不安ありで消し! 高速決着に対応できる穴馬で勝負
- 関東名門がアーモンドアイ初仔と目指す「最後」の日本ダービー! 今夏C.ルメールとデビュー予定、3年前の「超大物」が逃した舞台へ
- C.ルメールが「過怠金」横山典弘が「騎乗停止」に賛否両論!? 覚悟の突撃と不可抗力…JRAの一貫した判断とは
- 【オークス】「実質未勝利勝ち」4頭参戦にトライアル組は貧乏クジ? 優先出走権も事実上の無意味…トップクラスの参戦見送りに泣いた陣営と笑った陣営
- J.モレイラ「出禁回避」へ負けられない戦い! 桜花賞馬ステレンボッシュは「騎乗不可」、日本ダービーでも悩ましい選択?
関連記事
武豊、エイシンヒカリで香港C連覇し「あの感動名言」を再び!? 名コンビのラストランに熱視線
【徹底考察スペシャル】香港カップ(G1) エイシンヒカリ「武豊騎手と連覇でフィナーレを飾る!最大のライバル・モーリス撃破に必要なのは『欲』を捨てること?」
【徹底考察スペシャル】香港カップ(G1) モーリス「2000mを克服したマイル王にもはや死角なし?完勝の天皇賞・秋で世界のR.ムーア騎手が認めた『ミス』とは」
香港国際競走に日本からモーリスなど「G1級」馬13頭が出走!ハイランドリールら世界との力関係は
雪辱を期すビッグアーサーに立ち塞がる「日本を制圧したスプリント王」。昨年の高松宮記念当日にニアミスした「運命の対決」が実現する