【桜花賞(G1)回顧】M・デムーロ騎手歓喜の雄たけび! 大本命メジャーエンブレム敗北
しかし、大外からもう一頭のライバル・ジュエラーが猛追。必死に粘り込みを図るシンハライトに対して、馬体を併せてねじ伏せようとするジュエラー。前走のチューリップ賞とはまったく逆の構図になったが、最後の最後でハナ差だけ前に出たのがジュエラーだった。
まさに前門の虎、後門の狼。このレースで最も強い競馬をしたのは、もしかしたら敗れたシンハライトだったのかもしれない。メジャーエンブレムを負かしに行って、最終的にジュエラーの豪脚に屈した池添謙一騎手は、勝ったデムーロ騎手の労いの言葉に耳を貸せないほど悔しさを露わにしていた。
そして、メジャーエンブレムとルメール騎手にとっては、本当にただただ残念なレースだった。逃げなかったのか、逃げられなかったのかはわからないが、圧倒的な先行力とスピードの持続力が武器の馬が、結果的に切れ味勝負をしてしまった。本来の持ち味を活かせなかった「負けるべくして負けたレース」といえるのではないか。
その一方で、最後まで後方一気のスタイルを貫いて見事、桜の女王となったジュエラー。シンハライトもメジャーエンブレムも強い競馬だったが、「この馬は本当に賢い」と相棒の力を最も強く信じて乗っていたのがデムーロ騎手だったように見えた。
「三強」の一角を崩し、3着を確保したアットザシーサイドと福永祐一騎手にとっては上々の競馬。だが、「最後は力が及ばなかった」と話していた通り、上位馬との力の差を見せつけられた格好となった。本当に操縦性の高い馬で、道中での駆け引きがより重要になるオークスでも期待が持てる内容だったのではないか。
6着に敗れたラベンダーヴァレイと戸崎圭太騎手は、最後の直線でメジャーエンブレムに激しく競り掛ける厳しい競馬を見せてくれた。メジャーエンブレムの馬券を買っていたファンにとってはたまったものではないが、これもまたG1で大本命となった馬の宿命だろう。
勝ったジュエラーは、2011年にドバイワールドカップを制したヴィクトワールピサの産駒。この世代が最初となるが、世界を共に戦った相棒デムーロ騎手がいきなりG1勝利をプレゼントしてくれた。今後も楽しみな種牡馬だ。
それにしてもデムーロ騎手はフェブラリーSに続き、早くもG1を今年2勝目。大舞台での勝負強さが、再び光った。これで「三強」の格付けが決まったわけではないが、少なくとも「三強対決は三強で決まらない」という格言が再び証明されたレースでもあった。