【徹底考察】朝日杯FS(G1)ミスエルテ「怪物フランケル産駒の2歳頂点完全制圧なるか!ソウルスターリングと”真逆で唯一”の不安点とは…」
このまま後方馬群に沈むのか…多くのファンがそう思った瞬間、残り200m付近でエンジンにようやく火が付いた。大外から矢のような豪脚を発揮し、一気に前の馬に迫る。
逃げ粘るショーウェイをあっという間に交わすと、最後は馬なりでゴール。競馬をしたのは残り200mだけ。圧巻の差し切り勝ちであった。スタートや勝負どころでの加速など、随所に課題は見受けられるものの、爆発的な末脚はそれらを十分補って余りあるものを感じさせた。
【血統考察】
父フランケルは、イギリスで14戦無敗の成績を残し、史上最高のレーティング「140」を与えられた最強馬。冒頭でも述べたように、近年の欧州で好成績を挙げた馬の産駒は、日本の高速馬場に適さないイメージがある。原因として考えられるのは、欧州の重い芝と日本の軽い芝の違いだ。
これまで、日本の馬場に苦戦を強いられてきた欧州由来の種牡馬(ワークフォース、ハービンジャー)の共通点は、現役時代、主に中距離で好成績を収めていたこと。一方フランケルは、英インターナショナルS(2092m)、英チャンピオンS(2000m)を制すなど中距離での勝ち鞍もあるものの、卓越したスピードから1400m~1600mで圧倒的な強さを見せてきた。この類まれなスピードが子供にも受け継がれ、前述の馬の産駒にはない強烈なキレ味を発揮するのかもしれない。
ミスエルテの母ミスエーニョはアメリカのダート1400mG1・デルマーデビュタントSの勝ち馬。母父Pulpitは日本でもおなじみのパイロや、14・15年のアメリカリーディングサイアーで、アメリカ3冠皆勤を果たしたラニの父Tapitを輩出しており、現代アメリカダート路線における主流血統と言ってもいい。欧州とアメリカの「血の結晶」がはるか離れた日本の地で開花するのだから、競馬というのは面白いものだ。
【結論】
前走のファンタジーSではまだ幼い競馬ぶりを見せたものの、現時点で致命的な欠点とは思えるものはない。牝馬路線に比べて牡馬路線はタレントが揃っていないだけに、男馬相手でも力でねじ伏せる可能性は十分ある。