JRA蛯名正義「ムチ15連打」戒告に込められた執念。小倉大賞典(G3)デンコウアンジュ「イン突き」あわや……“爆発”の予感秘め、ラストウィークへ
21日、小倉競馬場で開催された小倉大賞典(G3)は、11番人気のテリトーリアルが勝利。3着にも12番人気のディアンドルが粘り込み、三連単は23万1750円の波乱となった。
今年最初のG1・フェブラリーSの裏開催ということもあって、例年あまり注目されていない小倉大賞典。しかし、今年は来週の引退が決まっている蛯名正義騎手が参戦、勝てば同期の武豊騎手らに続く史上7人目のJRA全10場重賞制覇達成となるだけに大きな注目を集めていた。
16頭立ての芝1800mのレースで、蛯名騎手がコンビを組んだのはデンコウアンジュ(牝8歳、美浦・荒川義之厩舎)。51歳の蛯名騎手よりも1つ上の荒川調教師も「記録が懸かっているし、何とか達成してほしい」と繰り出した管理馬は-14キロの“究極仕上げ”だった。
スタートしてすぐにデンコウアンジュを内へ潜り込ませると、いつも通り後方からレースを進めた蛯名騎手。4コーナーで各馬が馬場の良い外を目掛けてスパートを開始すると、デンコウアンジュだけがインベタで一気にポジションを上げる。最後の直線では一時先頭に並びかけるファイトを見せたが、最後は力尽きて5着に終わった。
「惜しい競馬でした。4コーナーで前がサッと開き、蛯名騎手が迷わず突っ込んだ時は、一瞬勝てるかと思いましたが、馬場の悪いインを突いた分、最後は脚色が鈍ってしまった印象ですね。
ただ、蛯名騎手にとっても一か八かの騎乗だったと思いますし、追い出しフォームは迫力がありました。あの動きを見ると、騎手としてまだまだやれるんじゃないかと思うだけに、やはり寂しい気持ちになりますね」(競馬記者)
レース後、「この馬のレースはできていると思います。最後までよく頑張ってくれました」と冷静なコメントを残した蛯名騎手だったが、やはりJRA全10場重賞制覇へ懸ける思いは人一倍強かったようだ。
「実はレース後に、最後の直線コースでの御法(鞭の叩き過ぎ)について戒告を受けています。決して褒められたものではありませんが、あと一歩のレースでしたし、やはり力が入ってしまったんでしょうね。記録を達成できなかったのは残念ですが、今日は小倉で2021年の初白星を飾るなど調子は上向きです。ラストウィークになる来週こそ爆発を期待したいですね」(別の記者)
記者曰く、1レースでムチの連打は10回までと決められているが、蛯名騎手は15回も叩いたという。規則を破ってしまった以上、擁護することはできないが、気持ちはわかるというファンも決して少なくないだろう。
JRAの公式ホームページでは『蛯名騎手引退特設サイト』が開設され、来週28日の中山競馬終了後には引退式の模様が公式YouTubeチャンネルにてライブ配信されるという。武豊騎手と共に長く競馬界を支え続けてきた名手・蛯名正義の最後の雄姿に期待したい。