JRA「引退忖度」で蛯名正義ファンはボロ儲け!? もはや年に一度の恒例行事…… 信じる者は救われる?
先週で2月の開催を終えた中央競馬。2月28日を以て、角居勝彦師をはじめ、松田国英師、石坂正師ら8名の調教師と蛯名正義騎手が引退。現役生活最後の日となった日曜、松田国師は阪神7Rを2番人気サイモンルモンド、星野忍師は中山8Rを1番人気カイアワセで勝利して有終の美を飾った。
競馬界に多大な貢献をした名伯楽が引退するとともに、この日がラスト騎乗となった蛯名騎手。34年の騎手生活に別れを告げ、これからは調教師として第2の人生をスタートさせることが決まっている。
日本ダービー(G1)、凱旋門賞(G1)の制覇は2着2回と叶わなかったが、これからは調教師として再び二つの夢に挑戦することとなる蛯名騎手。G1・26勝を挙げた名手の手腕に注目したい。
そんな蛯名騎手にとって掉尾を飾る舞台となった日曜の中山。関係者から7鞍の騎乗依頼が集まった。土曜に依頼を受けた5鞍とあわせて計12鞍。関東の大ベテランに対する各陣営による期待の表れでもあっただろう。
土曜は3着2回と勝利には手が届かなかった蛯名騎手だが、日曜は2勝を挙げる活躍。5Rの未勝利戦を4番人気シルバースピリットで外から鮮やかな差し切り勝ち。名手の真骨頂はスマートアルタイルに騎乗した10RブラッドストーンS(3勝クラス)だ。
16頭立てのフルゲートで行われたレース。スタートして出遅れたスマートアルタイルは後方からの競馬を強いられる。しかし、内枠からの出遅れは追い込みを得意としている馬にとって大きなマイナスとはならなかった。
レースがハイペースで流れたため、馬群がバラける展開。進路が窮屈になることもなく、外からスムーズに追い上げることに成功した。最後の直線で大外に持ち出されたスマートアルタイルの脚色は群を抜くものだった。
瞬く間に前を行く馬たちを交わし去り、楽な手応えでゴール板を駆け抜けた。
9番人気の伏兵の一発で単勝の払戻は2890円。中山10Rはこの日のWIN5対象レースに指定されていたため、思わぬ穴馬の激走に涙を呑んだファンも多かったに違いない。蛯名騎手はラスト騎乗となった中山記念(G2)でも、6番人気ゴーフォザサミットで4着に食い込み、存在感を見せつけた1日だった。
「馬に合わせてスケジュールを組む調教師と異なり、騎手は都合がつけやすいことも大きかったでしょうね。引退の花道を飾れるように、蛯名騎手を慕う関係者からの依頼が増えたのは分かる話です。
また、それに応えて結果を残した蛯名騎手の手腕も見事でした。一部のファンからは『忖度』という声も聞こえたりしますが、いい馬にいい騎手が乗って好走しただけのことですからね」(競馬記者)
お世話になった相手や縁のある相手への恩返しは、一般社会でも珍しいことではない。ルール違反でもないのだから、競馬ファンとしてはむしろ乗ってみるには大きなチャンスだったといえる。
振り返ってみれば、ラストウィークだった蛯名騎手の成績は【2.0.2.8/12】で勝率は16.7%。これだけなら驚くほどでもないのだが、注目は単複の回収率だ。単勝回収率が288%、複勝回収率は299%の大活躍だった。蛯名騎手が騎乗した12レースすべてで単勝と複勝を購入するだけで資金は3倍近くに膨らむことになる。
ファンの多い蛯名騎手だけに、熱心な蛯名信者にとっては笑いが止まらない結果だったのではないだろうか。年に一度の恒例行事となりつつあるだけに、来年以降も引退する騎手の激走には注意したいものである。
問題は1年後もこれを覚えていられるかどうかということなのかもしれない。