JRAグランアレグリア「有馬記念が東京2400mなら使う」藤沢和雄調教師「23年前」時代に泣いた最強の証明へ。「VSコントレイル」大阪杯(G1)挑戦から伝わる思い
先週末、角居勝彦調教師や石坂正調教師らが引退の時を迎え、競馬界の1年のサイクルが終わった。そして、それは同時に藤沢和雄調教師の現役最後のシーズンの幕開けを意味する。
現役唯一の1000勝超え、通算1528勝はJRA史上2位、グレード制導入以降の重賞100勝は前人未到……武豊騎手が騎手界のレジェンドなら、藤沢調教師もまた紛れもない調教師界のレジェンドだ。
そんな唯一無二の名伯楽の引退がいよいよカウントダウンに入る中で3日、厩舎の看板グランアレグリア(牝5歳)がノーザンファーム天栄から帰厩した。
昨年の安田記念(G1)でアーモンドアイに完勝し、JRAの最優秀短距離馬に選出されたグランアレグリアもまた、所属するサンデーレーシングの規定によって来年3月の引退が決まっている。来年2月の藤沢調教師と同様、実質この2021年がラストシーズンといえるだろう。
「有馬記念(G1)が東京の2400mなら使いますよ――」
今から23年前の1998年、藤沢調教師は後に殿堂入りを果たす世界のマイル王タイキシャトルを管理していた。
この年のタイキシャトルは、まさに向かうところ敵なしだった。春に安田記念を圧勝すると、フランスのジャック・ル・マロワ賞(G1)を日本調教馬として初勝利。秋のマイルCS(G1)で春秋マイル王に輝き、前年からの連勝を8に伸ばしていた。
しかし、当時タイキシャトルを「現役最強」と呼ぶ声は少数派だった。他のカテゴリーに本馬を超える存在がいたというわけではなく、マイル以下の短距離レースに対する世間的な評価が著しく低かったからだ。
結局、タイキシャトルはこの年の年度代表馬に輝いたが、1600m以下のレースにしか出走していないマイラーが年度代表馬に選出されたのはJRA史上初だった。当時は、やはり日本ダービー(G1)やジャパンC(G1)が行われる2000m以上こそが王道であり、チャンピオンディスタンスに掛からないレースは価値が劣るとされていたのだ。
実際にタイキシャトルは、前年もスプリンターズS(G1)とマイルCSを勝利していたが、年度代表馬投票では天皇賞・秋(G1)を勝っただけのエアグルーヴに後塵を拝していた。
本馬を管理する藤沢調教師も、当時の状況に歯痒さを感じていた1人に違いない。