JRA「芝コース未勝利」騎手が、田辺裕信「落馬負傷」で急遽抜擢! 単勝人気「大暴落」尻目に“得意”の代打でホームラン!
14日、中山10Rではリステッド競走の東風S(芝1600m)が行われた。最後の直線で二枚腰を発揮して逃げ切ったのは斤量58kgを背負ったトーラスジェミニ(牡5歳、美浦・小桧山悟厩舎)だった。
3枠3番の絶好枠からスタートしたトーラスジェミニ。ハナを主張し、前半34秒6というペースで軽快に逃げの手を打った。3コーナー過ぎには後続に3馬身ほど差をつけると、リードを保ったまま4コーナーへ。直線半ばには、外からボンセルヴィーソに並びかけられたが、ゴール前もう一伸びし、最後は2頭のマッチレースを制した。
トーラスジェミニの鞍上を務めたのはデビュー2年目の原優介騎手。先週末にデビューしたルーキー騎手たちが続々と勝利を挙げるなか、先輩としての意地を見せた形だ。
「無理せず逃げられたのも大きかったです。内の芝の良い所を選んで走ることができたので、その分上手く脚を溜めることができました。最後も併せ馬の形になってまた伸びてくれました」
3勝に終わったルーキーイヤーから一転、今年は3月時点で早くも3勝目を挙げたのは成長の証しだろう。東風Sの勝利は同騎手にとって、特別レース初勝利かつ芝レースでの初勝利でもあった。
それ以前の5勝を全てダートコースで挙げていた原騎手。もともとこの日はトーラスジェミニに騎乗する予定はなかった。関東リーディング首位(先週末時点)の田辺裕信騎手が、この日の6Rで落馬負傷。急遽白羽の矢が立ったのが、トーラスジェミニを管理する小桧山厩舎所属の原騎手だった。
関東リーディングを争う田辺騎手から、芝レース未勝利の原騎手への乗り替わり発表後には、SNSなどでファンから心無い声も上がっていた。
「乗り替わり前にトーラスジェミニの馬券を買っていたネット上のファンからは、(平場なら受けられる)3kg減量の恩恵を受けられない原騎手への乗り替わりに『納得できない』という声も聞かれました。2人の実績を比べても、そういう声が上がるのは無理もありません」(競馬誌ライター)
実際に単勝オッズの変動履歴を見ると、田辺騎手の落馬直前に5.7倍を示していたオッズは原騎手への乗り替わりが発表されると徐々に数字が上がっていった。発走が近づくにつれ6倍台から7倍台に推移。最終的には8.5倍でレースを迎えた。
結果的に原騎手は、そんなファンにとっては嬉しい誤算となる逃亡劇を演出したということだろう。
「ハナを譲らない積極的な競馬が功を奏し、見事な“代打本塁打”を放ちましたね。しかし、そんな原騎手は、実は乗り替わり騎乗時に非常にいい成績を残しています」(同)
これまで継続騎乗時は未勝利(129戦)だが、乗り替わり騎乗時に全6勝(262戦)を挙げている。自厩舎の馬という幸運もあったが、急遽の乗り替わりがいい方向に出たのかもしれない。
まだしばらくは3kg減の恩恵を受けられそうな原騎手。この勝利を機にさらなる活躍に期待がかかる。