JRA M.デムーロ「浦島太郎」のまま戸惑いの終戦。金鯱賞(G2)キセキ「僕の中ではもっと脚が……」C.ルメール、川田将雅らが残した「片道切符」と偽りの復活劇
14日、中京競馬場で行われた金鯱賞(G2)は、最低人気のギベオンが大本命デアリングタクトにキャリア2度目の土をつける波乱の結果に終わった。
ただ、デアリングタクトにとっては「負けてなお強し」といった敗戦。簡単に黒星が許される存在ではないが、これでファンの評価が急落するということはないだろう。また、2番人気のグローリーヴェイズも3着とはハナ差の4着。「世紀の一戦」と呼ばれた昨年のジャパンC(G1)で好勝負を演じたメンバーとして、次につながるレースだった。
その一方、またも“消化不良”を積み重ねてしまったのが、3番人気のキセキ(牡7歳、栗東・辻野泰之厩舎)だ。
「久しぶりだったので、気が入ってこなかった。ゲートの中でもボーっとして、スタートも出て行きませんでした」
レース後、鞍上のM.デムーロ騎手がそう振り返った通り、ゲートこそまともに出たものの、そこからダッシュがつかずに最後方からの競馬となったキセキ。最後の直線は外から懸命に追い上げたものの、5着と掲示板を確保するのが精一杯だった。
2017年の菊花賞制覇を最後に勝利から遠ざかって、もう4年が経とうとしている。今回は当時の栄光を知るデムーロ騎手と約3年ぶりのコンビ復活となったが、久々に相棒の手綱を握った“元主戦騎手”には「戸惑い」ばかりが残ってしまったようだ。
「出して行きましたが、リズムに乗って行きません。向正面でハミを取るかと思ったけど、全然取りませんでした。ズブい感じ」
スタートで後手を踏み、最後方のまま最後の直線を迎えたキセキ。ただ、デムーロ騎手が主戦を務めていた3歳夏から秋の頃には4戦連続で上がり最速を記録するなど、切れ味が身上の馬だった。それだけに、当時のような末脚勝負を期待したファンも多かったに違いない。
「それでも位置的には悪くないと思って、目の前の『デアリングタクトと一緒に上がって行ければ』と思っていましたが……」
しかし、そんなキセキの若き日の思い出とは裏腹に、デムーロ騎手はデアリングタクトと同じように早めに前を射程圏に入れたかったようだ。
前に行っても、後ろに行っても勝利が遠い。いよいよ八方塞がりの感が強くなってきたキセキ。特に最近は気性の悪さばかりが目立っている印象だが、その「きっかけ」は3年前のあるレースだったという。