JRA高松宮記念(G1)「波乱の前兆」は既にある!? ダノンスマッシュへの「追い風」、レシステンシアを脅かす「不安材料」とは?
28日、中京競馬場では高松宮記念(G1)が行われる。すっかり春の風物詩として定着した「電撃の6F戦」は、堅い時は恐ろしく堅いが、荒れる時は手が付けられないほど荒れる。
2年前は3連単449万7470円が飛び出し、昨年は降着になったとはいえ1位入線は15番人気のクリノガウディー、繰り上がり優勝のモズスーパーフレアは9番人気。ここ2年の荒れた流れを踏襲するのならば、穴党にとっては「待ちに待ったレース」と言えるのではないだろうか。
事実、今年も戦前から少し雲行きが怪しい。2月の阪急杯(G3)を阪神芝1400mのレコードタイム1:19.2で圧勝したレシステンシア(牝4、栗東・松下武士厩舎)は北村友一騎手から武豊騎手に乗り替わっての参戦が決まっていたが、その武騎手が右側部の靭帯損傷のため、21日の騎乗を全て取り消したのだ。前哨戦でスプリント適性を見せ、本番でも有力視されるレシステンシア。陣営にとって、高松宮記念まであと1週のところで思いもよらぬアクシデントが発生したことになる。
また、有力馬の回避としては父ロードカナロア、母カレンチャンと、両親が共に高松宮記念馬であり、京阪杯(G3)、オーシャンS(G3)で連続2着と好走したカレンモエ(牝5、栗東・安田隆行厩舎)が放牧。復帰は夏のサマースプリントシリーズになるという。収得賞金的に高松宮記念出走は微妙なラインだったため、オーシャンSは勝っておきたいところだったが、元気に夏を過ごせば秋のスプリンターズS(G1)には胸を張って出走してくるだろう。父母はスプリンターズSも勝っており、春でも秋でも親子制覇のお膳立ては整っている。
もちろん「穴馬降臨の呼び水」も忘れてはならない。週末の中京競馬場は雨模様と見られている。WIN5歴代最高額となった5億5444万6060円は、金鯱賞(G2)を最低人気のギベオンが勝利したことが原因だが、デアリングタクトの敗因と雨で前残りの目立っていた馬場は無関係とはいえない。
ここ3週は単勝1倍台前半の3頭、ダノンザキッド、デアリングタクト、アリストテレスが立て続けに敗れた他に、オーシャンSカレンモエ、中山牝馬S(G3)ドナアトラエンテ、Fレビュー(G2)オパールムーン、ファルコンS(G3)グレナディアガーズ、フラワーⅭ(G3)ユーバーレーベン、スプリングS(G2)ボーデンと、平地重賞の1番人気馬は目下9連敗中でもある。
ここまで来ると「負の連鎖」ともいえそうだ。
ただ、その流れの中に一つ気になる事があった。先の阪神大賞典(G2)の勝ち馬ディープボンドとスプリングSの2着馬アサマノイタズラは2頭とも母の父に「キングヘイロー」の名があったのだ。キングヘイローと言えばエルコンドルパサー、グラスワンダー、スペシャルウィークなどが活躍した「最強世代」の一角であり、00年高松宮記念の覇者。残念ながら今年の高松宮記念の馬柱に彼の名は見当たらないが、6歳にして悲願のG1制覇を成し遂げた雄姿を思い起こさせる一週前の激走だった。
高松宮記念馬の血が騒いだと見るならば……。
今年の高松宮記念出走予定馬で、親に「高松宮記念馬」を持つのは川田将雅騎手のダノンスマッシュ(牡6、栗東・安田隆行厩舎)のみ。昨年末に香港スプリント(G1)を制し、父ロードカナロアに親子制覇の吉報を届けたのは記憶に新しいところだ。
不吉な1番人気を「快速娘」レシステンシアや福永祐一騎手の「春秋マイル王」インディチャンプ(牡6、栗東・音無秀孝厩舎)と争うことが予想されるが、仮にそうなったところで秘める能力が変化するわけではあるまい。
いざ親子制覇へ。桶狭間の決戦は今年も熱くなりそうだ。