【徹底考察】有馬記念(G1)ゴールドアクター「マツリダゴッホ以来の中山非根幹専用機!グランプリ連覇には「人馬の絆」が必要不可欠!?」


 だが、残り500mを切ってもキタサンブラックとの差は縮まらない。それどころかむしろ距離を広げられ、ゴールドアクターの手応えのほうが先に一杯になってしまう。

 その先はもうキタサンブラックの一人舞台だった。最後まで必死の粘りを見せたものの、後方待機組のサウンズオブアースやシュヴァルグランにも差され、掲示板を確保するのがやっと。控えめに見ても”完敗”といえる内容だった。

 敗因として考えられるのは、余裕残しの馬体重。ジャパンC当日は前走オールカマーから8キロ増の504キロで、デビュー以来初の500キロオーバーだった。鞍上の吉田隼人騎手もレース後に「少し体が重たく感じた。以前よりもゴロンとした体型になっていた」というコメントを出しており、100%の状態でなかったことは確かだろう。

 余裕残しの仕上げだった理由は、単純に考えて「ジャパンCは本気ではなかった」という1点に尽きるだろう。成績を見れば中山巧者であることは明白なのだから、直線の長いジャパンCで究極の仕上げを施す必要はない。むしろ「昨年優勝実績のある有馬記念へ向けた試走」だったと考えたほうがしっくりくる。

【血統考察】

 日本・香港の両国で驚異の2階級制覇を成し遂げたモーリスを輩出し、今や日本におけるロベルト系の主流血統としての地位を築いたスクリーンヒーローを父に持つ同馬。ロベルト系は祖父グラスワンダーやシンボリクリスエスを筆頭に、過去の有馬記念で多くの勝ち馬を輩出しており、当レースとの相性は抜群である。

 先日ゴールドアクターの全弟を宿しながら惜しまれながら亡くなった母ヘイロンシンの父キョウワアリシバは、アメリカ2冠馬Alyshebaの血を引いている。だがこの血統を持つ馬は日本にほとんどおらず、重賞級の馬はゴールドアクターのみだ。

 オールドファンをうならせるシブい血統背景だが、さらに分析すると、父父グラスワンダーとAlyshebaの父Alyderの組み合わせからは何頭かの活躍馬が出ており、10年のステイヤーズS優勝馬コスモヘレノス、08年の新潟大賞典優勝馬オースミグラスワンなどが該当する。突然変異的な見方をされやすい同馬だが、その配合の裏には生産者の深い思慮と綿密な戦略が隠されているのかもしれない。

【結論】

 中山非根幹でメンバー随一の成績を誇るゴールドアクターにとって、有馬記念は力を発揮するベストのG1だ。それだけは間違いない。水曜日の枠順抽選で1枠2番という内めの枠を引いたのも、立ち回りが持ち味のこの馬にとって大いにプラス材料だろう。

 課題があるとすれば、それは気性面。常にパドックでチャカつくほどイレ込みやすいゴールドアクターにとって、落ち着いてレースができるかどうかは結果に大きく影響する。春の天皇賞では輸送のアクシデントで馬にスイッチが入ってしまい、吉田隼人騎手が手綱をずっと引っ張っていなければならないほどハミを噛んでいた。その結果の惨敗だったと考えることも可能だろう。馬券的な判断は、当日の返し馬まで待ったほうが懸命かもしれない。

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