JRA 「完成の域」近づくディープボンド“さらなる成長”天皇賞・春(G1)では「致命傷」の可能性も?
5月2日に阪神競馬場で開催される天皇賞・春(G1)。キズナ産駒としてG1初制覇を狙うディープボンド(牡4歳、栗東・大久保龍志厩舎)が有力馬の1頭として出走する。
昨年はクラシック3冠に皆勤。皐月賞(G1)10着、日本ダービー(G1)5着、菊花賞(G1)4着と距離が延びるごとに着順を上げていった。今年初戦の中山金杯(G3)こそ14着に大敗したが、前走の阪神大賞典(G2)を5馬身差で圧勝。主役不在の長距離路線で一躍、有力候補に躍り出た。
これまでの11戦中10戦で手綱を取ってきたのは和田竜二騎手。前走後には「体重もどんどん増えて強い調教にも耐えられます」とコメントを残していたように、菊花賞からの約5か月間で18kgの増量に成功。先週の『サンスポ』の取材にも「体も充実し、完成の域に近づいてきた」と愛馬の成長に自信を見せた。
「和田竜騎手の言葉通り、成長の跡は馬体重にしっかり表れています。2~3歳時は480~490kg台を行ったり来たりしていましたが、前走の阪神大賞典で500kgを突破。大久保龍調教師も『馬体に幅が出て、トモの厚みも増した』と称賛するほど。キズナ産駒のディープボンドにとってこれは非常にいい傾向といえるでしょう」(競馬誌ライター)
キズナ産駒には馬体重に関してある傾向が見られる。
【キズナ産駒の馬体重別通算成績】
450kg未満 「36-42-32-402」(勝率7.0%)
450~499kg 「110-92-79-711」(勝率11.1%)
500kg以上 「45-30-35-180」(勝率15.5%)
馬体重を3分割し、勝率を比較したがその差は明らか。450kg未満と500kg以上を比べると、勝率は実に2倍以上もの開きがある。
また、レース当日の馬体重増減もキズナ産駒のパフォーマンスを測る上で重要だ。プラス体重でレースに臨んだ時は勝率14.3%と高いが、マイナス体重時は7.4%とここでも2倍ほどの差がある。例えば代表産駒の1頭でもあるマルターズディオサは、450kgほどの比較的小柄な産駒だが、好走はプラス体重か増減なしの時に偏っている。
このことからもキズナ産駒は総じて、大きければ大きいほど好走が期待できるといえるだろう。この傾向は、ディープボンドの今年に入ってからの成長曲線ときれいに重なる。その充実度からレース当日はさらに馬体重が増加している可能性は高い。しかし、こと天皇賞・春に限れば、この傾向は決してプラスにはならない可能性がある。
1986年以降の過去35年間で、500kg以上の馬の天皇賞・春成績は「8-8-6-106」。勝率にすると6.3%なので、予想以上に苦戦しているといえる。
カギはレース当日の馬体重の増減。500kg以上の大型馬がプラス馬体重で出走してきた時は「1-1-1-37」と大苦戦している。もしディープボンドがプラス馬体重で出走すれば、過去のデータからは苦戦は免れなさそうだ。
父キズナは2014年と15年の2度、このレースで1番人気を裏切っている。ディープボンドは、父のリベンジを果たせるのか、レース当日の馬体重にも注目したい。
(文=中川大河)
<著者プロフィール>
競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。