JRA 「48馬身差」の悪夢払拭なるか!? 凱旋門賞(G1)コントレイル抜きでも勝算あり……、“超難関ミッション”攻略班に求められた共通の「スキル」とは
巷で話題の育成シミュレーション「ウマ娘 プリティーダービー」(Cygames)で競馬を知ったライトファンには馴染みが薄いかもしれないが、10月3日にパリロンシャン競馬場で行われる凱旋門賞(G1)は、世界最高峰との呼び声が高い最強馬決定戦である。
日本調教馬では過去、1999年エルコンドルパサーがモンジューの2着、2006年ディープインパクトが3着(レース後、薬物違反により失格)、2010年ナカヤマフェスタがワークフォースの2着、オルフェーヴルが2012年にソレミアの2着、2013年にトレヴの2着に入ったが、勝利まであと一歩のところまで善戦しながらも、幾度もその高い壁に跳ね返されて来た。
もはや、日本競馬の悲願ともいえる凱旋門賞ではあるが、13年オルフェーヴルの2着を最後に、以降は有力馬を送り込むも近年は惨敗を喫することも多く、現実から再び夢に遠ざかりつつあるのが現状だ。
直近では2019年にキセキ(7着)、ブラストワンピース(11着)、フィエールマン(12着)の3頭が出走したが、日本では“不良に近い重馬場”でいずれも惨敗。勝ち馬ヴァルトガイストからそれぞれ着差にして21馬身半、33馬身、48馬身も後方に置き去りにされたように、目も当てられない惨状だった。
その一方で、このとき日本馬にとって大きな足かせとなったのがヨーロッパ特有の「重い」馬場への適性だ。能力を発揮できなかった理由として、レースに騎乗した騎手は、口を揃えて「馬場が重かった」と振り返った。スピード勝負になりやすい日本の軽い馬場とは異なり、よりパワーを求められるのが欧州競馬の特徴だ。この年は水分を含んで土がまとわりつくような感じと説明がされたように、特殊な馬場状態で行われていた。
エルコンドルパサーやオルフェーヴルが好走した年も不良、重での開催だったことから、卓越した能力を持つ馬であれば、問題なくこなしていた背景はある。いずれも歴史的な名馬としてその名を刻んでおり、現役最強馬の挑戦であれば好戦可能といった見方もある。
とはいえ、このクラスの馬の登場を待っているだけでは、消極的過ぎるともいえる。欧州の馬場に適性さえあれば、対応できる馬がいても不思議ではないからだ。これには国際レースのジャパンC(G1)が、かつてのようにトップクラスの外国産馬が参戦を見送ることが珍しくなくなり、“日本馬の運動会”とも揶揄されるようになったこともヒントになりそうだ。
一因として考えられているのが、欧州と対極的に軽くてスピードが重視される日本の特殊な馬場である。日本馬が欧州の馬場に苦しむのと同様、欧州馬もまた日本の馬場に苦しめられてきた。凱旋門賞を優勝した馬が日本で走ったとして、日本馬相手に同様のパフォーマンスを発揮できるかとなると、必ずしもそうではないだろう。
となると、クローズアップされるのはそれぞれの馬場への適性であり、「郷に入っては郷に従え」ということになる。そういう意味では、今年の凱旋門賞にエントリーした馬の顔触れは「的を射た」メンバーだったのではないだろうか。
主催者のフランスギャロから発表された登録馬はクロノジェネシス、レイパパレ、ディープボンド、モズベッロ、ステラヴェローチェ、マイネルウィルトスの6頭。これを見てピンとくる方も多いと思うが、これらはいずれも力のいる馬場を大の得意としている馬。いわば重馬場のエキスパートが揃った。
最近でもアーモンドアイやコントレイル陣営が凱旋門賞を回避したことについては、賛否両論が沸き起こったが、2頭とも雨で渋った馬場で不覚を取った経験があるように、良の高速馬場を得意としているタイプ。欧州のタフな馬場への適性は懐疑的な意見も出ていたことから、仮に出走していたとしても善戦できるかどうかは疑問があった。陣営が適性を熟慮しての回避であれば、これを逃げたというのは早計だ。
我々競馬ファンは、どうしても時の最強馬に悲願達成の夢を託したくなるが、日本とは別のスキルが求められるという側面は軽視できない。
適材適所という意味でも今年エントリーした「特殊部隊」の派遣は、限りなくベターな選択だったといえるのかもしれない。将来的な凱旋門賞攻略を視野に入れるためにも、今年のメンバーの走りには大いに注目したいところである。
(文=黒井零)
<著者プロフィール>
1993年有馬記念トウカイテイオー奇跡の復活に感動し、競馬にハマってはや30年近く。主な活動はSNSでのデータ分析と競馬に関する情報の発信。専門はWIN5で2011年の初回から皆勤で攻略に挑んでいる。得意としているのは独自の予想理論で穴馬を狙い撃つスタイル。危険な人気馬探しに余念がない著者が目指すのはWIN5長者。