JRA 「因縁の相手」岩田康誠に痛快リベンジ!? 16番人気で53万馬券を演出、G1初騎乗の藤懸貴志が「一瞬夢を見た」大勝負とは
23日、東京競馬場で行われたオークス(G1)は、M.デムーロ騎手の3番人気ユーバーレーベンが優勝。3月に死去したマイネル軍団総帥・岡田繁幸氏に捧げる勝利となった。
無敗の牝馬二冠を狙った白毛の女王ソダシが直線で伸びを欠き8着に敗れた一方で、大波乱の使者を演じたのはハギノピリナ(牝3、栗東・高野友和厩舎)だ。単勝オッズ215.4倍の16番人気という、超人気薄が3着に食い込んだことで3連複は10万9190円、3連単は53万2180円の高配当となった。
デビュー11年目の藤懸貴志騎手は、新馬戦から手綱を取り続けて来たパートナーとの晴れ舞台。自身にとって初のG1騎乗となった大一番で抜群の存在感を見せた。
「この馬の競馬に徹して、最後の4ハロンに懸けました。これ以上ないぐらいの展開で、夢も見させてもらいました」
勝ち馬とは1馬身差、2着とはわずかハナ差の激走に、藤懸騎手が「夢を見た」のも当然だろう。それほど藤懸騎手のここに懸ける気迫が伝わる騎乗でもあった。
フルゲート18頭のレース。ハギノピリナはスタートを決めるも行く気はなし。徐々にポジションを下げて向こう正面では最後方から追走となった。そして、ここからが藤懸騎手のいう「最後の4ハロン」に懸けた大勝負だったに違いない。
3コーナー手前から進出を開始すると、最後の直線で大外に持ち出し。上がり3F34秒3の末脚を炸裂させてあわやのシーンを演出した。
「クールキャットにステラリアが絡んで予想以上に前半は流れました。また、断然人気ソダシにマークが集中したため、レース全体が前掛かりだったことも大きかったです。
後方待機組が掲示板を独占したように、差し追い込み馬に流れが向いたこともフレッシュなコンビにとって追い風でしたね」(競馬記者)
レース後に藤懸騎手が「この舞台でこれだけやれることがわかりましたので、また大きな舞台で結果を出せるよう頑張ります。良い経験をさせてもらいました」と胸を張ったのも納得の好騎乗だったといえるだろう。
とても初騎乗とは思えない大胆な作戦を決行した藤懸騎手に対し、「粗暴な行為、発言」に及んで開催4日間の騎乗停止処分を受けた「因縁の相手」岩田康誠騎手は10番人気タガノパッションで4着。先に動いたハギノピリカの後を追うように、後方から鋭い末脚を繰り出したが、1馬身1/4及ばずに後れを取った。
こちらも人気薄ながら健闘したものの、馬券圏内に食い込んだ藤懸騎手とは明暗が分かれる結果となった。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。