JRA 福永祐一「見えない強敵」との戦いが勝負弱さを克服!? ダービー3勝でついにアンチもダンマリ、“地獄を見た男”の覚醒ストーリーはまるで北斗の拳?
さらには「たくさんの方々に応援していただいてありがとうございます。最後に個人的な話ですみません。病院のおじいちゃん見てくれてましたか?やりましたよ。早く元気になって。ありがとうございました」と、翠夫人の祖父と思われる人に“私信”まで出す余裕も見せている。
ダービー勝利に恋い焦がれたかつての福永騎手なら、このような気持ちの余裕はおそらくなかったのではないか。
振り返れば元アナウンサーの翠夫人と結婚したのは13年8月。エピファネイアと臨んだダービーでは、武豊騎手のキズナにゴール寸前で交わされて2着に敗れた年でもある。また勝てなかったのかとうな垂れた福永騎手の姿が映し出されていた。
もう騎手を辞めて調教師でダービーを目指そうとまで追い詰められた一方で、自身初のクラシック勝利となった菊花賞(G1)、後に世界的名馬へと駆け上がったジャスタウェイとの出会いなど、逆襲の予兆はこの頃からすでにあったともいえそうだ。
「あげまん」という言葉はもはや死語となりつつあるが、福永騎手と苦楽を共にし、支えてきた翠夫人の内助の功なのかもしれない。
地獄を見た男の4年でダービー3勝という覚醒。まるで恋人を奪われたことをきっかけに、数々の強敵と戦い、最強の伝承者となった“北斗の拳”の主人公ケンシロウのように思えたのは気のせいだろうか。
(文=高城陽)
<著者プロフィール>
大手新聞社勤務を経て、競馬雑誌に寄稿するなどフリーで活動。縁あって編集部所属のライターに。週末だけを楽しみに生きている競馬優先主義。好きな馬は1992年の二冠馬ミホノブルボン。馬券は単複派で人気薄の逃げ馬から穴馬券を狙うのが好き。脚を余して負けるよりは直線で「そのまま!」と叫びたい。